生徒会
生徒会室では、男がひたすらパソコンを素早くブラインドタッチで入力していた。
その横で、また別の男が計算機を片手に、書類に文字を記入。
更にその向かいには、大量の書類に目を通す男の姿があり、左右にわけてひたすら選別している。
その三人の男達よりも幾分大きな机には、山積みにされた書類の集落が何個も出来上がっており、先程の男が目を通したそれらを同じように見ては、印を押す作業を永遠と行っていた。
その空間に響くのは無機質な音と、紙を捲る音、そして印鑑を押す音だけが存在している。
まだ授業中にも関わらず、その四人だけは他の生徒とは違う事をしていた。
時間も惜しむよう、学業に専念と言うよりは、事務職に追われているサラリーマン、そんな感じだ。
誰も何も発しず、目の前の仕事だけに集中しており、その空気は殺伐としたものだった。
むしろピリピリし過ぎて、第三者が入って来ても声すらかけれないだろう。
そんな空気を止めたのは、書類を左右に分けていた人物である。
「皆さん、そろそろ休憩にしましょうか」
その言葉と共に、皆が一斉に手を止めた。
そして、あくびをする者、両手を上に上げ伸びをする者、事切れたように机に突っ伏す者とでわかれる。
「私はお茶の用意をして来ます」
そう声を掛けて立ち上がったのが、この学園の副会長である、滝内社だ。
とても几帳面で朝からルーティンを決めており、その通りに動くよう、分刻みで行動している。
お茶の用意も潔癖症で、自分以外が煎れた物を口に含みたくないから。
呼び名はクイーン。
「社ちゃん、いつもありがとさん」
明るく声をかけたのは、会計の大友飛鳥。
ニコニコと笑顔を張り付けたように笑っており、男前美形。
その細い目に、実際は細くないのだが、開いてるか開いてないのかわからない瞳を隠すように、本心さえも隠してしまう事から、呼び名は笑顔の魔術師。
「いつも名前で呼ばないで欲しいと言ってますが?それに、ちゃん付けも止めて下さい」
社は何とも言えないくらいの、恐ろしい顔で飛鳥を睨み付ける。
言葉は丁寧だが、副音声で死ねやと聞こえるのは気のせいだろうか。
「アカンな、可愛い顔が台無しやで」
飛鳥はそんな社の様子を気にした素振りも見せず、机にほほ杖をついて、女の子が見たら蕩ける程の極上の笑みを送った。
「あなたの分は用意しませんので、ご自分で煎れて下さい」
ピシャリといい放ち、苛立ちを隠しもせずに給湯室へと消えて行った。
その姿に参ったな、とわざとらしくジェスチャーするも、明らかに表情は楽しんでいる。
「大友、お前はそうやって滝内をからかうから、嫌われるんだろ…」
ただでさえ寝不足な時に、あんな風にわざと怒らせる飛鳥に呆れた様子で声をかけたのが、この学園の生徒会長の桜鹿咲雨だった。
何をしても様になる事と、全てを完璧にこなす事から、呼び名はキング。
この目の前の男、飛鳥は本当にくえない。
油断ならないし、咲雨をもってしても一筋縄ではいかないのだ。
「ホンマか、俺、社ちゃんに嫌われてるんやね。残念や…」
そう肩を落としてるが、それ風を装ってるだけだとその場の者はわかっていた。
演技もするし、実際に心配そうな顔もする。
だが飛鳥の本音がどこにあるのか、小学生から一緒にいても未だ謎なのである。
「ぐぅ…」
イビキをかいて爆睡してるのが、先程異様な早さでパソコンを打っていた書記の関戸矢蘭。
興味のある事や、生徒会の仕事以外は基本寝ている。
これでも必死で眠気と戦っているそうだが、学園の生徒は蘭が動いているのをあまり見た事がない事から、呼び名は眠りの貴公子。
「蘭ちゃんも疲れとるんやね」
良い子、良い子、と眠ってる蘭の頭を撫でる。
ピクリとも動かずに爆睡する彼に、つい二人とも口が綻ぶ。
「違うだろ、こいつはいつもの事だ」
あまり蘭を甘やかすな、と言う意味を込めて咲雨が伝える。
「今日はえらい冷たいんやな、咲ちゃん」
「さきちゃん、言うな」
何だかんだ仲の良い二人。
咲雨は呆れながらも飛鳥の言葉遊びに付き合ってあげるのだった。
二人は幼少期からの親友。
2024.08.11
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