tori


右京真琴と親衛隊隊長


結愛の知らない所で、物語は進んでいた。
主人公が動けば、また周りの人間も動く。
そう、選択肢次第ではいくらでも道は変わるのだ。

時を遡る事、数時間前。
結愛達と別れてから、ラインを送って来た相手の所へ向かう真琴。
その足取りは若干苛ついているように思える。
それもその筈だ。
結愛との貴重な時間が奪われたのだから。
あと少し押せば、久々のお泊まりベッドでラブラブ大作戦になれたと言うのに。
押しに弱く流されやすい幼馴染み。
たまに結愛から漂う、弟を見るような目に気づいていた。
ほっとけない性格故に、最後は折れてくれるのだ。
それを黄昏の君の出現でおじゃんになってしまった。

「本当に面白くない」

美人な容姿からは考えられないくらい、低い声。
そして、鋭い目付き。

「今までみたいに、物影からひっそり見てれば良かったのに…」

アイスブルーの瞳は、まるで光を失ったように暗い色を放っていた。

「真琴様、お越し下さり光栄です」

がっちりとした体格の、長身の男が頭を深く下げ立っていた。

「うん、本当にそうだね。僕が来てあげたんだから、あの件はちゃんと進んでるんだよね?」

この男の部屋なのだろう、綺麗に整えられ、余計なものはないシンプルな装飾となっている。
共有スペースにある、大きなソファーに腰掛けた。

「そう、ありがとう。君だけだよ、僕の忠実な手足は」

真横に立っている男には見向きもせず、スマホを弄る。
真琴がこのソファーに座ると、隊長こと、織田おだ玄心げんしんは必ずこの場所につくのだ。
中学の時から親衛隊へ加わり、わずか一年で真琴の隊長にまで上り詰めた実力者だ。
何もかも徹底的にする、それがこの男のモットーであり、その残忍さに真琴は惚れ惚れしていた。
とは言っても、指示してるのは真琴自身なのだが。

「いたみいります」

片手を胸元に沿え、一礼する姿はとても紳士的で絵になっていた。

「ね、どうなの?あいつは動いてくれそう?」

スマホの画像を何枚も眺め、珍しく計算のない、純粋な微笑みを浮かべる。
その姿は可憐であり、見る者を釘づけにする程のものだ。

「はい、準備中です。但し、信用は出来ませんが」

スマホの画像は全て結愛の隠し撮り写真ばかりだ。
その中でも秘蔵映像は、着替シーンや、無防備な熟睡顔。

「ふふっ、うん、それでも良いよ。僕は暴れてくれれば、それだけで満足だからね」

その後にあいつがどうしようが勝手だよ、そう何事もないように呟いた。
玄心は画像を視界に入れないように、真琴と同じ向きに立つ。
彼の大切な宝物を盗み見するのは、自分の道徳にそぐわない。
真琴の意思だけが全てなのだから。

「それとさ、もうひとつ」

ソファーの背もたれに頭をもたげ、玄心を仰ぎ見た。
その目は鋭い光を放っており、真琴が面白くない時の瞳の輝きだ。
玄心は返事をし、次の言葉を待った。

「僕の結愛にたかる、汚いハエがいるんだよね。どうしようか?」

その言葉の意味を知るのは、玄心だけ。
考える時間もなく、即答したのだ。

「真琴様の意のままに…」

そう言って膝を付き、白雪のような綺麗な手の甲に口づけを落とした。

(さぁ、みんな審判の始まりだよ…。首をはねよ。)


2024.08.13

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