狙われたのは
(只今、絶賛逃走中。何故かと言うと、俺と夜蔵と小林で昼休みにトイレに行ったんだけど、気づけば小林と誰かが争う声が聞こえた。見たこともない柄の悪い筋肉質な奴等が三人、薄気味悪いニヤニヤした顔で入って来た。しかも尿をたしている時にだ。どんな嫌がらせだよっ!!野郎に見せる趣味はねぇし、とか思ってたら小林が床に倒れてるよ。やべぇ、俺らピンチじゃね?つか、小林大丈夫かよ…。)
「本郷っ、逃げるぞ」
篠の声と共に、手も洗わずに手首を掴まれた。
柄の悪い男達は逃がさないと勝ち誇った笑みを浮かべる。
さすがに結愛と篠の二人は喧嘩も強くもないし、運動神経もあまり良いとは言えない。
捕まるだろう、だがみすみす捕まる訳にはいのだ。
結愛ですらヤバイと感じるんたから、この学園にずっといる篠はもっと感じていた。
捕まったら最後、どんな事になるのか簡単に想像出来たのだ。
「お前らの相手は俺だろ」
先程まで倒れていた千尋がむくりと起き上がった。
そして、柄の悪い男達目掛け殴りかかる。
「夜蔵、外部生連れて逃げろ!御子神が迎えに来るまで隠れてろ」
その言葉と共に殴り合う音が響く。
篠は迷う事なく、結愛を連れて走った。
その後を一人の男が追ったが、今の千尋には二人を相手にするので精一杯だったのだ。
「元風紀委員長様が相手か、腕が鳴るぜ!」
「犬神じゃなくて、一安心だな」
男二人が厭らしい笑みを浮かべ、わざと千尋を挑発する。
「お前ら、何のつもりだ。何故あの二人を狙った?」
千尋は眉を吊り上げて、青筋立てていた。
「あの二人?バカ言うなよ、俺らの目的は一人だけだぜ」
「だよなぁ、二人とも平凡顔だから見分けつかねぇけどな」
男二人はバカにしたように大笑いする。
「どっちだ?夜蔵と外部生どっちが狙いなんだ」
「もちろん、夜蔵に決まってんだろ」
その言葉に、千尋の目が細まった。
「お前らF組だな、誰の命令だ」
「言う訳ねぇだろ、それを言ったら楽しくねぇし」
「目障りなんだよ、あいつ」
千尋の怒りがどんどん上昇して行く。
篠が何をした。
ただ普通に生活してるだけなのに、いつも狙われて傷つく。
一年前も襲われて、未遂だったが深い傷痕が残っただろう。
「お前らだけは許さない。俺の名にかけて、夜蔵を傷つける者は容赦しないからな」
千尋の冷たい瞳に、柄の悪い男の一人が口笛吹き、もう一人の男は意地悪い笑みを浮かべた。
「黄昏の君のナイトかよ、お前らデキてんのか?」
「どっちでもいいけど、どう容赦しないのか楽しみだな」
からかうように言った瞬間、千尋の長い足が宙を舞う。
気づいた時には、男は背中を下にし、床に倒れていた。
「テメェ!!!」
もう一人の男がすぐさま殴りかかってくるも、しゃがんで下から拳を上に振り上げ、アッパーをくらわした。
放物線を描くように、その男が吹っ飛んだ。
結愛達がいる時は二人を守らなければと、意識がそっちに行っていたから、実力の半分も出せなかったが、あの二人がいない今、何をしようが、どうしようが己一人な為、遠慮などいらなかった。
千尋は風紀委員長をしてた程の腕があり、二人くらい朝飯前なのだ。
「もう終わりなのか、その筋肉は宝の持ち腐れだな」
気絶してる二人を見て、ふんと鼻を鳴らした。
そしてスマホを操作し、電話をかける。
「…すみません、犬神委員長。親衛隊二人を確保しましたが、夜蔵と外部生をフリーにさせてしまいました。自分の力が及ばないばかりに、申し訳ありません。まだ奴等の仲間が追いかけてます」
千尋は淡々と報告しているが、その表情には焦りの色が見られる。
「はい、自分はここで待機してますので、どうか夜蔵達を救出して下さい」
電話を切り、男二人のネクタイを引き抜くと、両手を背中でひとまとめに拘束した。
今すぐにでも篠達を助けに行きたいのに行けない現状に苛立ちが込み上げて来る。
自分が未熟だから、生徒一人すら守れない事を悔やんでいた。
(もっと強くなりたい。)
2024.08.21
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