ロールキャベツ男子
風紀室では柄の悪い三人の男達の尋問が始まっていた。
加害者と被害者が顔を合わせるのはタブーとされている為、永久に連れられ別室から風紀専用の控え室へと入って行ったのだ。
カードキーでしか内に入る事が出来ない為、変な輩が進入する可能性もない。
そして一度入った者は、風紀の者が来るまで外にも出られない仕組みとなっている。
だから、只今、結愛と篠はベッドやソファーが置かれた空間に二人きりになっていた。
「その、夜蔵…、この体制って…」
結愛がおどおどしながら、目の前の篠に声をかける。
「どうかしたのか?」
不思議そうに声をかけるが、どうもこうもない。
結愛は二人掛けの端に追いやられ、篠が腰に腕を回し、今流行りの顎クイたるものをされているのだ。
「いやいやいや、これはおかしくないか」
篠の胸に両手を置き、それ以上近づかないように力を入れる。
(え、何、これって無意識なのか?…いやいやいや、おかしいだろっ!つか、さっきまで俺は夜蔵と…)
そこまで考えて、結愛の顔が赤くなる。
「本郷、凄く可愛い」
結愛の瞳がうるうると憂い帯びており、篠が自然と喉を鳴らした。
顎に置かれた指が、ゆっくりと唇へと動く。
「っ…」
それだけで、結愛の体がピクリと反応した。
そして、ふにふにと感触を確かめるように何度も触れては、色っぽくなぞる。
「俺は本郷の事が好きだ」
そう言って、猫目の瞳の奥ががギラリと光った。
それは男の目をしており、男と言うよりは雄と言った方が正しいのかもしれない。
「っ…、え?好、き…?」
唇同士が触れ合う寸前で、篠はずっと止まったまま結愛を見つめる。
その瞳が熱を帯びていて、冗談で言ってるんじゃない事くらい容易に想像出来た。
「初めてなんだ。…こんなにも愛しいと思ったのも、触りたいと思うのも」
その言葉に、結愛の心臓がときめく。
顔を真っ赤にして、ふるふると睫毛を揺らした。
目は篠から逸らし、潤んでいる為、壮絶な色気を醸し出している。
好きな相手のそんな仕草を見て、ましてや至近距離で、唇を触っている状態で我慢する方が難しいだろう。
篠の喉が再びゴクリと音を立てた。
それに気づき、結愛が視線を戻すと、先程よりも更に熱い視線を送る篠と目が合ってしまう。
「!」
いくら男同士の恋愛経験がなくてもわかる。
目の前の男は自分に欲情している。
全身から好きだとオーラが物語っていた。
「俺は本郷にキスして、今すぐに抱きたい。恋人になる権利が欲しい…」
篠からの衝撃告白に、結愛は唖然とする。
隙さえあればスキンシップが激しく、目が合えばキスの合図とばかりに今日を過ごした。
何となく感じていたが、まさか自分が抱かれる側である事に驚きを隠せない。
篠は控えめだが綺麗だ。
それに比べ、自分は本当に平凡。
誰がどう見ても篠が抱かれる側だと思ったに違いない。
そもそも篠に性欲がある事に驚愕する。
全く興味なさげだし、淡白なイメージだったが、キスばかりする所を見ると、凄く積極的でちまたで有名なロールキャベツ男子と言うものだろう。
しかも恋人になりたいとまで思っているとは夢にも思わなかったのだ。
「え、ちょ、待って…。夜蔵、何かおかしいって…」
結愛の手が小さく震える。
篠から放たれる色気と、ビシビシと伝わって来る愛情。
それに戸惑いを隠せずにいた。
「おかしくなんかない。初めて会った時から、惹かれてんだと思う。俺もこんな感情初めてだから、全く自制が効かない…」
とても辛そうに顔を歪める篠に、結愛が心を痛める。
真剣に想ってくれてるのに、おかしいなんて言葉を言ってはいけなかった。
男同士などあり得ない、そう昨日までは確かに思ってたけど、キスされて、告白されて、気持ち悪いなど一度も感じなかったのだ。
「ありがとう…、俺の事を好きになってくれて。
夜蔵の事は友達として好きだし、大切だけど、その…夜蔵の気持ちと同じ意味で好きなのかは正直、わからないんだ」
結愛は申し訳なさそうに答えた。
「いや、良いんだ…。俺を否定しないでくれた事が嬉しい。あと触るのもキスするのも気持ち悪かったか?」
不安そうに伺う様子に、結愛の胸が再び痛む。
「そんな訳ない、その、ビックリはしたし、慣れないのもあるけど…夜蔵とのスキンシップやキスは嫌じゃない。むしろ、気持ち良いくらいなんだ…」
結愛は自分が何を言ってるか、わかってないんだろう。
告白された相手からのスキンシップ、キスが気持ち良かったなど伝えたら、どうなる事か。
2024.08.22
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