2
「俺のせいで、小林…ごめんな。謝れば済む問題しゃないけど、身をていして守ってくれたのにお礼を言うのが遅くなっちゃったな。ありがとう。…怪我はしてないか?」
千尋の方へ歩いて行くと、殴られたであろう場所を触れるか触れないかの位置で擦るような仕草をする。
そして、物凄く心配そうに見上げる表情は平凡とは言えないくらいに、千尋からは可愛いものに見えたのだった。
「……、あ、いや…、怪我はしてないし、大丈夫だ」
千尋の頬が赤く染まり、照れ臭そうに視線を下ろした。
結愛はそのまま千尋の頭に手を添えると、優しく良い子をするように撫でる。
そして上目遣いで、安心したように微笑んだのだ。
「本当にありがとう。俺達だけ逃げて、ごめん。だけど小林が無事で良かった…」
頭を撫でる気持ち良さと、普段そんな風にされた事がなかった為に、千尋の顔と耳が更に真っ赤に染まった。
背後から、ほとりの舌打ちが聞こえる。
「…天然タラシだな…」
それに相づち打つように永久が頷いた。
「ええ、こんなのされたら、ひとたまりもありませんね。第二の春、到来の予感します」
ふふ、っと永久が微笑ましそうに二人を見つめて笑った。
「…あいつはバカか…。…ここで…そんな無防備にしたら、…襲われても文句言えねぇだろ…」
面白くないとばかりに、結愛を睨み付ける。
ほとりも同室で何か感じる事があるのだろう。
無防備で少年のように笑ったかと思えば、急に大人っぽくなる結愛の身を案じていたのだった。
「……はぁ」
ほとりが溜め息を吐いたと同時に、風紀室のドアをノックする音が響く。
「右京真琴様親衛隊隊長の織田です」
凛とした声が聞こえ、永久が返事をする。
外側からはロックがかかっている為、入る事が出来ないので千尋がドアを開けた。
すると玄心がその場に立っており、結愛を見つけるなり、蕩けそうな笑みを浮かべる。
「え…?」
今朝会ったばかりの玄心からの甘いオーラと笑顔に、結愛がその場で固まる。
そして千尋が結愛を玄心から守るように、その背に隠した。
「おや?お姫様を守るナイトのようですね。守るお相手、間違えていませんか?」
微笑みは絶やさず、玄心は少しだけ眉をつり上げた。
玄心が言っているのは篠の事だろう。
篠の護衛をし、篠をそう言う目で見ていた堅物の男に、微かに玄心の機嫌が悪くなる。
だが、それでも他の人間には気づかれないレベルのものなのだが。
結愛は今朝の事もあり、警戒心むき出しで玄心から見えないよう、更に千尋の背に隠れる。
そして、自分よりも高い千尋の背中にぎゅっと張り付くようにくっついた。
それに男の体が面白いくらいに反応し、顔を真っ赤に染める。
そして口元は嬉しさてニヤけていた。
「…はぁ…、早速、男を惑わせやがって
…」
ほとりは呆れ顔で一部始終を見て、手遅れだな、なんて思った。
「失恋には新しい恋を、ですからね」
永久は後輩の新しい春を嬉しそうに見守った。
「結愛様、そんな男に張り付かずに、私の胸へどうぞ。いつでも空いてますので」
そう玄心が言ったと同時に、その背後から人が出て来た。
「ねぇ、邪魔なんだけど。早く入ってよね、結愛に会いたい!」
玄心を邪険に扱うと、千尋の背後に隠れる結愛を見つける。
「結愛っ、無事で良かった!」
千尋を弾き飛ばし、結愛をぎゅっとその腕に抱き締めた。
「真琴…?」
甘い香水の香りと共に、背中に回る手がそのまま下へと降りる。
「結愛に何かあったら、僕どうしようかと思ったよ…。本当に良かった…」
声は凄く心配そうに聞こえるが、いかんせん。
下に降りた手が、結愛の尻を厭らしく揉み始めた。
「ひぃいぃぃぃ!?」
結愛がこれでもかと悲鳴をあげると、何事だとみんなが一斉に注目した。
元々結愛達に注目していたが、それが尻に向かったのだ。
「ん、柔らかくて弾力あって、気持ちい」
わざと割れ目に指を這わせ、ぐっと力を入れる。
「んっ…」
すると突然の事に、艶のこもった吐息をあげてしまった。
それには揉んでる真琴がゾクゾクとした興奮にかられ、鼻息が荒くなる。
千尋は顔を真っ赤にし、何故か前屈みに。
そしてほとりはやってられないとばかりに呆れ、永久と玄心は微笑んで、おや、と呟いた。
(何だ、これは!また恥ずかしい声が出たし、この空気ヤバイだろっ勘弁してくれ…!)
結愛が顔を真っ赤にして、真琴から逃げるようにして部屋の隅に脱兎したのは言うまでもない。
(みんなの前で、一日に何度もセクハラされました。もうお婿に行けない!)
2024.08.24
- 31 -
*前次#
ページ:
今日:111 昨日:32 合計:26903