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「…テメェ…、ポヤポヤしてんのも大概にしろよ…。何で反対のドアから出てたったんだ…、アホか…」
ほとりは青筋を立てて、結愛を睨みつける。
どうやらトイレの出口は何個かあり、結愛は入って来た所とは別の方へ出てしまったが為に、ほとりとすれ違いになったのだった。
「ざけんな…」
低い声で呟いたと思ったら、ほとりは権兵衛へと視線を戻した。
「…こいつは危険人物だ…。…お前みたいな鈍い奴はすぐ食われちまうんだよ…」
権兵衛の胸ぐらを掴み、壁に叩きつける。
バンと大きな音がその場に響き渡った。
「そない言い方したらアカン、ホンマ誤解招くやんか」
「…誤解も糞もねぇだろうが…」
結愛は何が何だかわからず、ただ二人を見ていた。
「テメェ…、こんなのに関わったら、制裁なんてモンじゃすまねぇからな…。その穴がガバガバになるまで犯されるぞ…」
その言葉に、結愛の顔がどんどん真っ青になる。
さすがに何の事を言っているのか理解したようだ。
「失礼や、俺はちゃんと愛のある行為しかせぇへんよ?結愛ちゃんやったら、ちゃんと愛して、可愛がってあげれんで」
権兵衛は甘い声で囁く。
それに結愛はぶるりと身震いしたのだった。
「……調子こいてんてんじゃねぇぞ…、テメェん所の親衛隊が暴れたせいで、何人被害あってるか知らねぇとは言わせねぇぞ…」
ほとりが再び権兵衛を壁に叩きつけ、切れ長の目を細めて凄んだ。
「アカンてちゃんと注意しとるけど、止まらんのや。堪忍してな?それに結愛ちゃんなら本気で愛せそうやん」
ニコニコしたまま、ほとりの手首を掴む。
そして、凄い勢いで振り払った。
「結愛ちゃんの不安そうにしとる顔もそそられんで。…ホンマに俺のモンならんか?」
結愛の腰を引き寄せたと思うと、次の瞬間には口づけをしていた。
「んっ!?」
あまりの早さに結愛は抵抗すら出来なかった。
甘いムスクの香りが鼻腔をつき、引き締まった体に抱き締められる。
唇の割れ目から舌が進入すると、結愛の舌を目掛け絡ませた。
ヌルヌルと生き物のように動くそれに、結愛の体がふるりと震える。
「ふぁっ…んんっ」
逃げようと後ずさるも壁際まで追いやられてしまった。
これ以上下がれないのを良い事に、舌は口腔を縦横無尽に舐め尽くす。
あまりの上手さに、腰が砕けて立っていられなくなった。
それを権兵衛の膝が支えるように入ったのだ。
「あっ、んっ…」
結愛の微かに反応した息子に太股をわざと押し付け、グリグリを刺激する。
その強弱がたまったものではなく、結愛の口から甘い声が洩れた。
「あっ…ふぅっ、…あっ」
その間も珍しい玩具を見つけたと言わんばかりに、権兵衛の目がすっと見開く。
その瞳は鋭い光を放っていた。
「…人の目の前で、キモい事すんな…」
ほとりは心底気持ち悪いとばかりに顔を歪め、権兵衛の首根っこを掴むとぶん投げた。
だが、それでもしっかりした体つきの権兵衛は大した事ないとばかりにふらついてよろけるだけだ。
「マジ、頭いかれてんじゃねぇの…」
威嚇するように、結愛を再び背中に隠し、舌打ちをする。
「ワンちゃんはホンマ怖いんねなぁ。年上に生意気な口聞いたら、アカンよ?こないされたら、ゾクゾクしてもうて、何や…捻り潰したくなるやん」
面白そうに笑う権兵衛に、結愛の背筋に悪寒が走った。
ほとりが本気でキレておるにも関わらず、怯む所かわざと挑発しているし、面白がってるように見える。
ほとりから、目の前の男は危険だと言われた意味がようやくわかった。
根本的に何かがズレているのだ。
「…生徒会だからって、何でも許されると思うなよ…。このアホに、ちょっかい出すな、面倒臭ぇ…」
(は!?生徒会なのか、こいつ!風紀じゃないのかよ!?…え、何がどうなってるんだ?)
結愛はあり得ないとばかりに、権兵衛を凝視する。
その視線に気づいた男が、結愛にだけウインクした。
「ヤベェ…、本当にテメェを殺してぇ…」
ほとりからドスの効いた低い声がもれる。
どうやら飛鳥のような、チャラチャラした男が苦手のようだ。
「ほとりちゃんにそない熱い告白されたら、揺らぎそうやないか。けど、アカンわぁ…。もうちょい可愛げあった方が好みなんやけどなぁ」
権兵衛はからかうようにケラケラと笑った。
それに対し、ほとりの眉間の皺がより深くなる。
「ぶっ殺す…、テメェ、マジで名前呼ぶんじゃねぇ…。糞が!気持ち悪ぃ…」
今までの非じゃないくらいに、ほとりから纏うオーラが変わった。
もう本気で殺意が芽生えて、指の間接をポキポキと鳴らしている。
2024.08.27
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