毎度あり
校内新聞では、結愛が男のイチモツを蹴り上げる凛々しい写真と共に、美樹の詳細な文章が綴られていた。
風紀と新聞部は協定を結んでいる為、学園の治安を守っている風紀への生徒達の支持率はとても高い。
「今日の新聞は目玉商品ばかりやでっ!たっくさん買うてってや〜」
美樹がリンリンとハンドベルを鳴らせば、周囲の生徒達がわんさか集まる。
そして昨日徹夜で仕上げた新聞を販売していたのだった。
「きゃあぁぁ、御子神様、格好良い〜!」
男子校なのに、何故か女子のような黄色い悲鳴か聞こえる。
「千尋くんの眼鏡姿も素敵っ!」
それに続くように、小柄な生徒達が頬を染め、新聞の記事を読み上げる。
「永久様の笑顔に蕩けちゃう〜」
野太い声が聞こえ、一瞬周りの騒音が消えた。
「永久様、格好良い〜」
可愛い声がし、周囲は何だあの野太い声は空耳か、と納得する。
「御子神様のこのクールな眼差し、痺れるよねぇ〜」
再び、可愛い声が聞こえ、周囲が賑わいを取り戻していった。
「的井くんの危険な雰囲気も良いよね〜」
アキラは生態を一切見せなかっただけに、興味はあっても言葉に出せなかった生徒達がここぞとばかりに集まって来る。
これも風紀に永久が招いてくれたお陰と、新聞部様様だと感謝の声が次々と聞こえた。
「みっなさ〜ん、平凡くんも頑張ってますよってからに!注目したってや〜」
各風紀委員ごとに、新聞の内容が分けられ、もちろん一番人気は永久である。
その次がニューエースのほとり、そして無難なのは千尋だった。
「美形ばかりで疲れた、そこの君達、胃もたれしとったんちゃう?ほんなら、平凡くんお奨めやで〜」
美樹は胡散臭い笑顔で、周りから離れてる一角の生徒達に手招きする。
すると、おずおずと数人が近寄って来た。
「平凡くんって、背の小さい子だよね?僕、この間足を滑らせた時に、彼に体を抱き締められて守ってもらったんだよね」
頬を赤く染め、カードを機械に添える。
ピッと電子音と共に会計が終了した事を告げる音楽が鳴った。
「そやで〜、その平凡くんや!その時の記事も載ってるさかい、ようく読んだってぇな〜」
白い歯をニシシと見せ、細目が一本線となって微笑む。
「わぁ、僕もこないだ、重い荷物持ってた時に全部運んでくれたんだっ!」
そう言って、次々と可愛らしい生徒達が買って行く。
どうやら結愛は困ってる人間や、危なっかしい人を助けてしまう癖があるようだ。
そんな行いが項を称したのが、全く手付かずだった新聞がどんどんと売れて行く。
永久やほとりのように大量に刷ってないが、美樹個人的にいち推しなのでそれなりに用意していた。
原石を見つけた自分に自画自賛くらいである。
「平凡で可愛いよな…」
そう言って、体格の良い生徒達も何人か新聞を買って行った。
「顔が良い奴は性格悪いのが多いけど、こいつは平凡だからなのか?乏してるとかじゃなくて、何て言ったらいいんだろな。贔屓とか、嫉妬の世界にいなかったからなのか、本当に誰に対しても気さくで良いよな」
照れ隠しだろうか、今まで新聞に見向きもしなかった普通、または不細工な生徒達が結愛の事を誉めながら買っていく。
「平凡くんはホンっマに良い子やでっ!君ら話、良うわかってるやんか〜。何や、フラグめっちゃ立っとるやんけ!堪らん、堪らんよっ、平凡受っ、最高!」
美樹とも結愛の話で盛り上がり、周囲は過去一番の盛り上がりを見せた。
その隣では何かをブツブツ高速で言っている一二三の姿もあるが、やはり柱の影に隠れながら、新聞販売をしていた。
もう一二三の存在にも慣れている生徒達は、気にも止めずに彼からも新聞をたくさん購入している。
「はいはいは〜い、みっなさん、本日の新聞完売しましたよってからに!ホンマ、ありがとさん。毎度あり〜」
リンリンとハンドベルを鳴らし、美樹と一二三は颯爽と去って行ったのだった。
辺りは新聞を買った生徒達で埋め尽くされ、互いに誰が良いだの、この写真が最高だの、ファンになっちゃったと大盛況である。
風紀は隠れファンが多い。
2024.09.16
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