tori


ハムスターだって肉食系男子


生徒会室の前で、二人の生徒が鉢合わせしていた。

「んん〜?君はもしかして、もしかしなくとも平凡くんのお姫様ちゃう?」

美樹が上から下までをニヤニヤした薄気味悪い笑みを浮かべて、舐め回すように見つめた。

「うっ…、美作くん…」

柚希はその視線から逃れるように、後ずさる。
そして苦手オーラ全開で警戒心むき出しにしていた。
この視線が嫌なのか、それとも美樹自体が生理的受け付けないのか、多分その両方だろう。

「そない顔しても可愛ぇだけやで。何やここに用があるんか〜?」

恐ろしい勢いで顔を近づけ、柚希をガン見する。
その姿は物凄く気持ち悪いものだった。

「…そんなの、君に関係ない…」

顔を書類で隠すように、視線を逸らす。
その瞬間に紙の裏から、結愛の親衛隊結成の文字が見えた。

「えぇやん、えぇやんっ、それでこそ平凡くんやでっ!何や、お姫様は惚れてもうたのかいな?」

その言葉がわからない程、鈍くない柚希の顔が瞬時に真っ赤に染まる。

「ほな、良い話あるで?たっくさん平凡くんのレア写真あんねん。良かったら、初回限定で安うしとくで〜?」

先程のような関わりたくない態度が一変、柚希がキラキラとした目で美樹を見上げた。

「ほ、本当…?えっと、あの…じゃあ、とびきり笑顔のとか…ある?」

おずおずと照れながら言う姿は、本当に女子そのものだ。

「ある、あるで!そない写真でえぇんか?もっと過激なん、たっくさん持ってるさかい。自分、いらんのか?」

その言葉に、柚希は小さく首を振る。

「欲しくない訳じゃないんだけど、僕は本郷くの笑顔が好きなんだ」

顔を真っ赤にして、笑った。
それが何ともいじらしく、美樹は自然な笑みを浮かべる。

「そう言う事なら、協力したるわ〜。ほな、この中の好きなもん選びよってからに」

そう言って、懐から何十枚にも渡る結愛の笑顔写真を渡す。

「わぁ!!凄い、格好良い!!え、どうしよう、全部素敵だよぅ…」

女子のようにキャピキャピする姿に、美樹は得意気な顔をする。
電卓を取り出して、物凄い速さで打つ。
それを素早く柚希に見せた。

「この辺でどや?半額以下やでっ!」

美樹の提案する金額は驚く程に安い。

「え、これ全部で!?」
「そや、君は俺に萌えを提供してくれたさかいっ!感謝も込めてこの値段や!それにホンマ、平凡くんが好きなんやなぁ…」

どこか眩しいものを見るように、美樹は柚希を見つめた。
本当に、金の為にしてるのではない。
自分の萌えの為に、自分が満足いくまで被写体に恋して、その全てを知りたいと思って撮ったものに金が付いてくるのだ。
かと言ってボランティアでもないので、それなりの目利きで、取れる人間からはガッポリ。
カツカツの人間には優しい金額で、萌えを提供してくれた人には半額並のサービスをしていた。

「ぜ、全部買う!」
「おおきに!この機械にカード添えてや〜」

電子ボタンを操作し、手のひらサイズの機械を柚希に向ける。
そこには先程の金額が記され、カードを置く場所が光っていた。
柚希は言われるままにそれを置いた。
電子音がし、会計を知らせる音楽か流れる。

「お買い上げ感謝〜。ほな、これもサービスしたるわ」

そう言って渡したのは、あの事件の後に柚希をおぶる結愛の写真だった。
太陽の光に反射した黒髪が天使の輪を作り、その後ろで気絶する自分を大切そうに背負う姿は何とも絵になっている。

「え、えぇ!!?……こんな凄い写真、タダで良いの?」

それは嬉しそうに微笑む柚希に、美樹は満面の笑顔で大切にしてや、と言ったのだ。

「今後も贔屓にしたってや〜」

そう言って、先に生徒会室へと入って行ったのだ。
その姿を見て、柚希は美樹を誤解していた事に反省する。

「ぼったくりなイメージだったけど、違ったんだね…。あと、誤解してるようだけど、過激なのは自分自身でしたいから、楽しみにとっておきたいんだよね。僕以外の人間によって得られたものなんか、欲しくない。君の全ては僕のものだよ。……僕の下で、僕だけに気持ち良さそうに喘ぐ姿、想像するだけで逝きそうになっちゃうなぁ…」

その呟きは誰に拾われる事なく、落ちて行ったのだった。


見た目がどんなに可愛くても美少女に見えても、ただの男。
その姿に騙されるとパクリと食べられてしまうよ。


2024. 09.20

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