少女漫画のヒロイン
玄心は洗面所でタオルをお湯で暖め、ソファーですやすやと眠る結愛の体を綺麗に拭く。
先程の乱れによって、汗や精液の名残が所々についていた。
「紳士的にジワジワと落とすつもりだったのですが、思いのほか余裕なんてありませんでした…。結愛様、誠に申し訳ありません」
謝りながら結愛の体をじっくりと見つめる。
その瞳は愛しさが込められていた。
結愛を再び真琴達が眠るベッドへ横にさせれば、ぐっすりと寝ているのか起きる気配はない。
脳震盪を起こし、気絶した相手にあんな行為をしてしまった事に罪悪感を感じる。
結愛のあれ程可愛い姿を見せられて、手を出さずに耐えるなど出来なかった。
しかも自分の部屋ではない、真琴のリビングでだなんて獣以下である。
「おやすみなさい」
結愛の額にキスをし、部屋を出た。
その様子を狸寝入りして見ていた人物がいたのだ。
「あの玄心がねぇ…。ついに本気になっちゃったか〜」
恭介が結愛の寝顔を見て、複雑そうに笑った。
真琴の大切な幼馴染みと知ってたら、こんな気持ちにもならなかったんだろう。
出会ってしまったのだ、自らを犠牲にしてまで助けてくれた男気ある人に。
恭介の方が身長も高いし、体つきも結愛に比べてしっかりしてる。
細身である事には変わりないが、それでも咄嗟に支えるなんて並大抵の人間には出来ない。
それでも恭介が怪我をしないよう、必死で受け止めてくれた強さに、思い出すだけで胸が高鳴った。
喧嘩の強い男が好きだ。
ずっとそれだけを求めて来た恭介に、強さとは力だけじゃないとハッキリわからせてくれた。
本当の強さとは、誰かを守りたい、計算や損得なしでいる事なんじゃないだろうかと。
「とか言って、俺もヤバイんだよなぁ…。全くタイプじゃないのに、すっげぇドキドキすんだから、参ったわ…」
結愛のあどけない寝顔を見るだけで、ほっとするような、荒れた心が癒されていく。
前まではワイルドで危険な男ばかり好きになっていたからか、こんなにのほほんと和んだのは初めてだった。
「ヤバイよな…。めちゃくちゃ可愛いんだけど…」
恭介はガックリと頭をベッドに撃沈させた。
これが恋なら、今までのはスリルを味わいたかっただけなのかもしれない。
「この歳になって、恋愛に悩むとかマジかよ…。俺には青龍がいるってのに、本当に調子狂う…」
恭介は先程から独り言をブツブツと呟いている。
真琴や結愛が起きないレベルの小ささだ。
「こいつらがライバルとか、無理だろ…。色んな意味で、勝てる気がしねぇわ…」
苦笑いする恭介だが、全く諦める気はない。
初めて好みではない男にときめいたのだから、これこそが本物の恋なのだろう。
あの衝撃を忘れる事なんて、出来なかった。
まるで少女漫画のヒロインになったように、結愛がキラキラと輝いていたのだから。
それと同時に、青龍の姿も脳裏を過った。
まるで二人の男に翻弄されるヒロインだな、と苦笑いしたのである。
少女漫画をバカにしてはいけません。
ヒロインはヒロインなにりに、たくさん悩んでいるのですから。
2024.10.16
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