会長と転校生
※暴力、流血シーンあるので注意。
一年S組に転校生が入ったと話題は持ちきりになった。
その理由としては容姿端麗、そして誰が見ても見とれるくらいの美しさに加え、気さくな性格がかなり人気に火をつけたのである。
「玄心、明け方いなかったけど、どこに行ってたの?」
真琴から突き刺すような視線を感じる。
きっとこれは確証ないも何か勘づいている証拠だ。
寝室には結愛と真琴、そして恭介の三人しかいなかった。
部屋のどこにも玄心の姿が見当たらず、真琴は思う。
自分に隠れて何かしているが、それを絶対に言わないし、気づいているのに知らないふりをする狡い男だ。
「申し訳ありません。少し野暮用を済ませておりまして」
食えない笑みを浮かべ、誰もがほうっと見とれる程である。
こんな時の玄心は何を聞いても知らぬ存ぜぬだし、元々秘密主義の為、真相は闇の中だ。
「……、ふぅん…まぁ、良いけどね」
真琴は面白くないとでも言うように、視線を外した。
それを玄心が申し訳なさそうに見えるよう、眉毛を下げる。
その顔がまた悲しそに見えるものだから、質が悪い。
絶対何とも思ってもないし、悪いなど一ミリたりとも感じていないだろう。
「まぁまぁ、そこら辺にしとけよ」
転校生の恭介が二人の間に入る。
もうクラスメイトからしたら、その見目麗しい三人は完全なる目の保養だ。
あまりにも美しく整った顔と抜群のスタイルの3人。
注目されない筈がない。
恭介の存在で、より今年の一年は美形揃いだと拍車をかけたのだった。
一目転校生を見に来た生徒達で、入口や廊下の窓は人だかりが出来ているではないか。
「それにしてもスゲェ人だかり。俺らは動物園のパンダかってんだよ」
呆れたような顔ですら、美しい。
もう親衛隊結成も間近だろう。
「そこを退いてくれ」
一際目立つ外見と、洗礼された格好良さを持ち合わせた人物がS組の入口へ入って来た。
それに驚いた生徒達からは、想像絶する黄色い悲鳴が聞こえる。
急に騒がしくなった廊下へ目を向ける三人の目に、意外な人物が映ったのだ。
「……は?何だよ、あのイケメン」
恭介がそう声にすると、周りの生徒達が一斉に思う。
お前もイケメンだからな、と。
「これはこれは、珍しい事もありますね。生徒会長様直々、一年の教室にいらして下さるなど」
玄心は驚いた顔をするも、全く意外ではないと内心思っていた。
「ついに忙し過ぎて頭いかれたのかな?ここ会長の教室じゃないよ、やっぱ不眠症の噂は本当だったんだね」
真琴はさほど興味ないと、視線だけを咲雨に向けた。
更に皮肉混じりの言葉も付け加えて。
「ふぅん、生徒会長かぁ。しかし俺のタイプ、ど真ん中だな」
恭介はニヤリと悪戯っ子がするような笑みを浮かべた。
「ええ、そのようですね。恭介、お好きなだけ下半身をフル活動させてあげて下さい」
玄心も咲雨に興味ない為、どうでも良いとばかりに伝えた。
「じゃあ、いっちょ戦い挑んでみるか!」
両手を音が鳴る程に合わせ、恭介は自らの唇を舐める。
そして関節をパキパキ鳴らし、咲雨へ近づいたのだった。
「転校生の阿曽沼恭介だな?話がある、少し良い…」
言いかけの途中で、恭介の拳が振りかかった。
それにいち早く気づいた咲雨は、驚く様子もなくヒラリと余裕でかわしたのである。
「へぇ…?やるじゃん、会長さん」
恭介は面白いとばかに挑発的な笑みを浮かべ、咲雨を上から見下ろした。
「…目上の人間に襲いかかるなんて、感心しないな。それにタメ語を使うのも良くないだろう」
礼儀やマナーを何より重んじる性格の咲雨は、恭介のように理由も言わず殴りかかる人間が何より嫌いだ。
そして人生の先輩に対してのタメ語と質問に対しての答えを返さない無礼さ。
どれもが咲雨の怒りを買うには充分だった。
「はっ…、そんなナリしてて、ジジ臭ぇ事言ってんなよ。俺は堅苦しいのが嫌いなんだ。タメ語の何が悪いんだよ?フレンドリーにしてやってんのに、真面目で面白味の無さは見た目通りだな。まぁ、そう言う男を従わせるのが好きなんだけどな」
恭介は射止めんばかりの鋭い瞳で、咲雨を睨みつけた。
そこに微かに見える興味と下心。
「本当に言葉がなってないのか。……、一度、痛い目見る必要があるようだ」
咲雨の目から光が消える。
いつも真面目だが穏やかなイメージがあったが、それが成りを潜め、何とも冷たい色を放つのだろうか。
恭介は目の前の男にゾクゾクと興奮したのだった。
「その台詞、そっくりそのままアンタに返してやるよ」
そう言って、恭介が再び殴りかかった。
動きを一瞬で見極めているのか、咲雨は平然としてそれをかわし続ける。
「ほう…、やはり噂通り、会長様はお強いですね」
玄心が感心したように、二人の攻防戦を見ていた。
「あの噂は本当だったんだね。会長が最強だっての。普段からギラギラしてないから、男よけの為の嘘だと思ってたよ」
真琴も感心しつつ、咲雨の動きから一切目を離さない。
教室には打撃音が響き、辺りは騒然としていた。
あの会長が怒りを露にするなど、今まで一度も見た事もなかったからだ。
どんな時も慈悲深く、許しを乞えば情けをくれる。
「ええ、そうですね。…やはり噂はあくまで噂なのでしょう」
玄心は何を考えてるかわからない笑みを浮かべ、咲雨を見つめる。
そんな玄心に、真琴は小さな溜息をつくのだった。
「恭介、勝てるとよいけどねぇ」
真琴は全く興味ないとばかりに、あくびをし、机に突っ伏したのだった。
2024.10.22
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