tori


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※攻×攻あり、注意。


二人の攻防戦が続く中、段々と疲れが見えてくる恭介に対し、咲雨は息すら上がってなかった。
これにはさすがの恭介もカチンと来てしまう。
表情ひとつ崩さす、涼しげな顔をした咲雨がまたカンに障って仕方ない。
喧嘩で負けた事がほぼない恭介にとって、数少ない敗北感を味わったのだった。

「アンタ、マジですました顔して、ムカつくんだよっ!その顔を、俺の下で歪ませてやりてぇな。アンアン鳴かせてぇわ…。俺、めちゃくちゃ上手いんだぜ?天国見せてやっからよ!」

明らかに下世話な言葉に、咲雨は呆れたと言わんばかりに虫けらを見るように恭介を見据えた。

「…そんな言葉しか言えないのか、お前は。本当にどうしようもないな。……天国?それはこっちのセリフだな。今からお前をそこに送るまでだ」

今まで手加減していたであろう手に力を入れ、殴り飛ばした。
物凄い勢いで恭介が教室の端まで跳び、周りの生徒から恐怖の悲鳴が聞こえる。

「俺はな、愛だの恋だの否定する気はないが、男同士の恋愛に自分が対象になったり…、性欲処理で使われるのが一番辛抱ならないんだ。……わかるか?俺にはお前のような、男同士のお遊びにはつき合ってる時間は生憎ないんでな」

ゆっくりと歩き、机の下敷きになっている恭介の元へ近寄る。

「へぇ…?気が強ぇのもドストライクじゃねぇか。こんな事されたら、余計に燃え上がるだろうが!会長さんともあろうものがわからないのかよ?マジで可愛いじゃねぇの」

口から血が滴り、唾をその場で吐き捨てた。
それに血が混ざり、赤みを帯びる。
面白いとばかりに恭介は立ち上がった。
それをS組や、野次馬の生徒達が一斉に注目したのだ。

「悪いな、男に興味もなければ、恋愛対象でもない。お前がどんな感情を抱こうが、俺には全く関係ない。いいか、……諦めろ」

咲雨が真顔で伝えれば、恭介は口笛を吹いた。

「本当に、アンタ良い男だな。ますます燃えてきたわ」

口元から滴る血を手の甲で拭うと、近づいて来た咲雨の胸ぐらを掴んだ。
直ぐ様その手を退けようとしたら、物凄い勢いで引き寄せられた。
殴りかかってくるとばかり思っていただけに、突然の不意打ちに咲雨の瞳が微かに見開く。

「アンタ、マジで俺の物にするわ」

そう伝えれば、隙だらけの唇を恭介が奪ったのだった。

「きゃあぁぁぁぁ!?」

教室中に悲痛な悲鳴とどよめきが一気に広がる。
咲雨は何が起きたのかわからず、鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていた。

「あ〜あ、やっぱりやっちゃったよ。今日から恭介、会長の親衛隊にロックオンされるね。本当、ご愁傷さま」

真琴がこうなる事を予想していたとばかりに、目の前で繰り広げられている茶番を嘲笑う。

「あそこ、学園一の数だから、制裁決定だよ。暴れて良いとは言ったけど、こうもやってくれるとさすがに引いちゃうよね」
「ええ、本当に下半身でしか生きてませんからね。私としては、結愛様へ危害なければ恭介を煮るなり焼かれるなり、好きなようにしてもらって構いません。いつも暴れてばかりなので、少しは痛い目に合えば良いと思います」

玄心も二人のキスシーンを見て、ニコニコと爽やかに嘲笑う。

「そうだね、そこが一番問題だったから、相手が会長で良かったよ。あんな顔だけの男、どこが良いのかねえ。あ、色気もあるのか?いやぁ、でも俺の結愛に比べたら、大した事ないよねぇ。もうさ、結愛のエロさと言ったら…ヤバすぎでしょ?考えただけで勃ちそう」

真琴が頬を染め、昨夜の事を思い出し、嬉しそうに微笑んだ。
それを玄心が見て、玄心も同じように恥態を思い出し、ほうっと熱の籠もった吐息を洩らす。
あの時の結愛の可愛さと言ったら、今でも脳裏に鮮明に蘇る。
とても淫靡でいて、透明感があり自らの手により乱れて、よがり狂う姿は堪らない。
結愛の中に挿入れたなら、どんなに幸せだろうか。
早くひとつになって、誰にも見えない場所に閉じ込めて、毎日あの体を余す事なく貪りたい。

「早く結愛とえっち、したいなぁ」

真琴の声が鮮明に響く。
あぁ、そうだった。
我が主も彼に夢中なのだ。
負ける気はしないが、一筋縄でいかないだろう事はわかっている。
辺りが騒然とする中、二人だけ別の争いをしていたのだった。

「っ、テメェ!!!マジでぶっ殺す!!」

再び恭介は殴られ、放物線を描くように教室の端まで飛んで行った。

「糞野郎っ、本当に気持ち悪ぃ!」

自らの唇をゴシゴシと拭い、嫌悪感を顕にする。
心底軽蔑した咲雨により、恭介がボロボロになるまであと数秒。
そして騒ぎを聞き付けた結愛が到着し、ボロ雑巾のように転がる恭介に悲鳴をあげたのも数秒後の事だったのである。
血だらけで気絶する姿は物凄い地獄絵図で、ホラーでしかない。
遅れて来たのは千尋で、あまりの惨劇により結愛同様に固まったのだった。


ホモ嫌いの会長に手を出したのが運のツキ。
地獄へのカウントダウン、スタート。


2024.10.23

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