宿命
しばらく二人は至近距離で見つめ合う。
永久は結愛の唇の感触を確かめるように、何度も触った。
そして血痕が付着した部分を綺麗にするように擦れば、結愛の開いた口に自らの親指を入れたのである。
「んっ!?」
急な異物感に、結愛の瞳が大きく見開く。
何が起きたのか理解出来ず、鼻が付きそうなくらい至近距離にいる永久を凝視した。
「こうやって、君の舌に触れましたか…?」
親指だけではなく、人差し指も入れると結愛の舌を掴むように二本の指を動かした。
「んっ…、ん…?」
結愛は自分が何をされてるのか、まだわかってない。
ヌルヌルと掴めない舌の感触を楽しむように、指がバラバラに動き始める。
その間、永久は感情の読めない瞳でずっと結愛を見つめていた。
「んっ、ふぅ…っ、んん…」
親指を引き抜くと今度は中指を入れ、まるでフェラを強要させるように指を出し入れさせる。
その間もプチュパチュっと結愛の唾液が永久の指に絡み付き、粘着質な水音が室内に響き渡った。
「こんな風に、あいつの舌を受け入れました?」
口角には飲み込めなくなった唾液が流れ、結愛は必死で永久の手から逃れようと頭を左右に振った。
それを許さないとばかりに後頭部を反対側の手で固定するよう掴み、身動き出来ないようにする。
「はっ、んふぅ…、んっ…んっ…」
とても厭らしい事をしている気分になり、結愛は嫌々と頭を振るが逃がしてもらえない。
永久の胸板を手で押すもびくともしなかった。
手のひらに感じる筋肉質な胸板。
まるで自分とは違うそれに驚きを隠せない。
細身の体に似合わない、硬く弾力ある胸板。
制服越しには絶対気づけなかったが、相当鍛えているのがわかる瞬間であった。
「そんな蕩けた顔で、見つめたんですか?」
結愛が頬を真っ赤に染め、永久の指を飲み込む姿は何と扇情的だろうか。
目に涙を溜め、必死で唾液を飲み込もうとする様に自然と永久の喉がこくりと鳴った。
「あいつの記憶など、忘れさせてあげます」
そう言って、永久は結愛の至近距離にある唇を奪った。
「んっ!?」
結愛は目をこれでもかと大きく見開き、固まったのだ。
慌てて更に永久の胸元を押し返そうとするがその手を捕まれ、背後の掃除用具入れに体ごと縫い付けられてしまう。
背中と後頭部がそのドアに当たると、二人の体がズルズルと崩れるように床に滑り落ちた。
永久に両手首を掴まれ、身動きとれないよう床へと拘束させられる。
「んっ、んんっ…ふぅ、っ…」
その間も縦横無尽に動き回る舌が、結愛の舌を捉えるとまるで待っていたとばかりに激しく絡ませる。
性急すぎる動きに飲み込めなくなった唾液が零れた。
見た目からは想像すら出来ない激しい口付けに、結愛は空気を吸う暇さえ与えられなかったのである。
「んんっ、はっ、んむぅ…っ、ん…」
鼻でどうにか呼吸するも、普段の物腰柔らかい姿では想像出来ないくらいの激しさに結愛の意識が朦朧とする。
動き回る舌の感触が体の奥底をジワジワと浸食するよう、中心部に熱が篭るのがわかる。
背筋がゾクゾクとし、ヌメヌメと絡まる舌が淫靡で堪らななかった。
「っ、…はぁ」
永久の唇がようやく離れたかと思えば、二人の間には銀色の糸が引いており、色っぽい声が鼓膜を揺する。
細められた目元から覗く瞳がやけに色っぽく、吐く吐息ですら厭らしく感じてしまう。
普段の優しい微笑みからは想像つかない程の雄っぽい表情。
小麦肌と金色の髪が余計に拍車をかける。
まるで口説かれ、求愛されているような感覚に陥った。
自分が雌にでもなったように体が甘く痺れ、蕩けた思考回路で永久を見つめるしかない。
結愛のその一連の動きがどれ程、永久を刺激するかも知らずに。
キスひとつでここまで骨抜きされている様を見て、永久の男としての本能が顔を出す。
ぺろりと薄い唇から舌を出し、ゆっくり舐める動きに、結愛の腰がずくりと疼く。
自分を食べようとしている男の視線から、目が逸らせなかった。
「こんなトロトロな顔をして…夜蔵くんも、御子神くんも誘ったんですか?……いけない子ですね。僕が構ってあげなかったから、寂しかったですか?…すみません、これでも風紀委員長なので何かとやる事が多くて…」
結愛の手首を掴んだ手を動かし、擽るように指を手のひらに這わす。
その焦れったくもあり、くすぐったさに結愛の体がびくりと反応した。
そして悪戯するよう何度もクルクルと指で優しく触れれば、結愛は目を細めて目に涙を溜める。
「あの男も君のこんな色っぽい顔を見たと思うだけで、虫酸が走りますね…」
悔やむように顔を歪め、永久は結愛の指に自らの指を絡ませた。
恋人繋ぎのようになり、再び口づけを再開させたのである。
結愛はあまりの気持ち良さに、何も考える事が出来ず、与えられる唇に夢中になって応えた。
「はっ、んっ…っ、ふっ…」
結愛から発せられる吐息は甘く、先程から何度目になるかわからない煽られに完敗する。
こんなに可愛い反応をされたら、男として堪らない。
篠もほとりも夢中になる訳であり、そりゃ何度だって求めるだろう。
結愛の唇についた血痕が、二人の唾液と熱により溶ける。
咥内には微かに鉄の味が広がったのだった。
可愛い、可愛い自分の秘蔵っ子。
編入試験の時から目をつけ、初めて見た瞬間に永久の中で稲妻が走った。
平凡な容姿なのに、全く目が離せないのは何故なのか。
何度振り払っても視線は釘付けとなり、この子を自分の側に起きたい衝動にかられる。
甘やかせて油断した時に、ぱくんと美味しく頂きたい。
そんな欲求が永久の中で渦巻いていた。
ほとりと同室になり、アキラがスマホを拾った時に勝利を確信したのだ。
もうこの子は自分ものだと、他の誰が手を出しても自分だけのものになるんだと。
もっとじっくりじわじわと侵食させるつもりが、オニキスのシルバーリングを嵌めてるのを見たら、余裕など吹っ飛んでしまった。
あの男の寵愛を受けるなど許さない。
余所見などさせてたまるか。
結愛は自分のものになる宿命なのだから。
「今日から、僕の部屋で一緒に過ごしましょうね。さぁ、早く…僕に全てを委ねて下さい」
実は一番捕まってはいけない人間に目をつけられていました。
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