ペンギンと狐
帝が構内に忍び込んでしばらくすると、目の前にはよく見知った顔を見つけた。
「そこのフォックス、久しぶりだなぁ」
帝が片手を上げ、上機嫌で挨拶する。
それに気づいた飛鳥も同様に片手を上げた。
「何や、ペンギンちゃんやん。今日はどないしたん?」
ニコニコ笑顔をはりつけ、飛鳥は旧友にでも会ったかのように訊ねる。
一瞬穏やかな空気の中で、二人は急にピタリと立ち止まった。
「狐って、どない事やねん」
「それを言うなら、ペンギンって何だよ」
二人の笑顔が消え、瞬時にどちらともなく殴りかかった。
互いに避け、距離が縮まる。
「動物園に帰らなアカンやろ?飼育員さんが慌てて探しとるん違うか?ペンちゃん何処やぁ〜って」
飛鳥の鋭い眼光が開き、今にも射止めんばかりの低い声で囁く。
「へぇ、言ってくれるじゃねぇか。狐が人間に化けんの、いい加減止めたらどうだ?とっとと山へ帰りな」
帝の切れ長の瞳がギロリと細まり、飛鳥を睨み付けた。
「よう我が物顔でここまで、来れたなぁ?久々の外出は疲れるやろ。、ホースで水引いて頭からザバーって、かけたろか」
そう言ったと同時に、飛鳥は帝の脚を蹴った。
ドカっと大きな音がし、よろけながら今度は帝が飛鳥の腹部を思いきり殴ったのである。
「ぐっ…!」
飛鳥からくぐもった声がし、帝はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「本当にお前は気にくわねぇな。この俺様をここまでイライラさせられるの、フォックスと腹黒くらいだろ」
飛鳥は腹部を抑え、ニヤリと不気味な笑みを浮かべるとそのまま帝を背負い、廊下の隅まで投げつけた。
放物線を描くように飛んでいく。
「そっくりそのまま返したるで。俺もここまで反りが合わんの、ペンギンちゃんだけやわぁ」
二人はその後も互いに言い争いをし、体力尽きるまで殴り合ったのだった。
両者血だらけになり、立ってるのもやっとになっても勝敗はつかず。
どちらも実力は互角な為、やり合っても決着がつかないのがお決まりなのだ。
「相変わらず、ムカつくなっ」
帝が頭から血を流し、壁に寄りかかるように床へ踞る。
「ホンマ、こっちの台詞やで…っ」
飛鳥も片ヒザをついて、壁に手を付いた。
「この学園にガキどもがいるから忍び込んでみれば、毎回毎回邪魔ばかりしやがって」
堪らねぇとばかりに、帝が大きな溜め息を吐いた。
「何や、そこまで情報掴めとるんか。さすが嫁はんいる奴は、何かと違うんなぁ」
飛鳥はクスクスと声を出して笑った。
「うちのは凄いからな。まぁ、お前ん所のハイエナには敵わないが…」
二人は立ち上がると、何事もなかったように歩き出した。
飛鳥は害虫が何をしに来たのかわかり、問題ないと興味を無くす。
帝もチャイルドプレイの存在を飛鳥が既に周知している事を悟り、更にはまだ正体を知らない様子を悟った。
だから、四神遊びを一時中断したのだ。
あまり飛鳥に構うと、可愛い嫁さんがヤキモチ妬くからなぁ、とか独り言をブツブツ呟きながら。
「どっちが先にガキどもを仕留めるか、見ものだな。俺様の若い連中がお世話になったからよ、そのお礼に来てやったんだが、フォックスに出会えるとはな」
帝の言葉に、飛鳥は振り返らずに微笑む。
「そやな、お子ちゃま狩りはこれからやで。堪忍な、いくらペンギンちゃんでも侵入者をタダで見過ごすなんて出来へん。まぁ、チャイルドプレイも同じやけどなぁ」
それを合図にして、二人は互いの目的地へと向かったのだった。
まるで今の敵はお前ではない、チャイルドプレイだとでも言うように。
ペンギンと狐の攻防戦、一時中断。
2025.01.01
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