tori


結局、天然には敵わない


「まぁ、恋人とは言いましたが僕達はあくまでもカモフラージュなんですがね」

飛鳥とほとりの悲痛そうな顔を見れただけで、永久は満足とばかりに微笑んだ。
この2人に意表をつけられた事が何より面白い。
まさかここまで踊らされてくれるなんて。
そして同時に思う。
結愛の存在の大きさは彼らだけでなく、自分にとってもこれからは驚異になる事だろうと。

「は…!?」
「カモフラージュ、って何や…?」

上からほとりと飛鳥の順番で驚愕の表情をし、絞り出すような声を出す。
永久は結愛をぎゅっと自らの方へ抱き寄せ、顎にそっと手を添えた。

「え、委員長…?」

急な接近に結愛が驚いている間に、その唇を自然な流れで奪った。

「んっ…」

結愛から洩れる声と震える体に、飛鳥とほとりは同時に立ち上がる。

「ん…っ、ふっ…、ん、ぅ…」

永久は結愛を愛しそうに見つめ、ひたすら激しいキスをした。
甘い声が洩れ、飛鳥とほとりの表情が鬼の形相へと変わる。
咲雨は二人のキスシーンを呆然としながら見るしか出来なかった。

「っ、…玄武さんっ、止めて下さいっす…!」

ほとりが永久の肩を掴んで止めさせるも、二人の口付けは止まない。
ちゅっと皮膚同士の触れ合い、粘着音が静かな室内に響き渡った。
結愛の目が見る見るトロンとし、ほとりはこの表情を知っている。
自分と口づけをした時に見せた、蕩けるような顔だ。
恥ずかしそうに頰を染め、色っぽく揺れる瞳は男の本能をむき出しにさせる。
こんないじらしくて可愛い存在を自分だけのものにしたくて、無我夢中で貪った記憶は新しい。
それを他人に見せてるなんて、ましてや自分の時よりも気持ち良さそうにしてるなんて許せない。

しかもよりによって、飛鳥もいる中で。
ほとりの中で嫉妬の炎が燃え上がった。

「…ん、白虎、野暮ですよ?僕らは今、キスをしているんですから」

そう言って、永久は再び結愛の唇を奪った。
礼儀を重んじるほとりには、永久を殴り付ける事も結愛を無理矢理奪う事も出来ず、ただ悔しそうに唇を噛み締め耐えるしかない。

「こんな時でもワンちゃんは従順なんやな。自分の欲しいモンくらい守れなくて、どないするん?」

飛鳥は無表情で永久から結愛を取り上げたのである。
自分がしたくても出来なかった事を、この男は軽々とやってのけたのだ。
それがほとりには悔しくて仕方なかった。
結愛は突然の浮遊感に、飛鳥の首にぎゅっとすがり付く。

かみちゃん、アカンで?俺を嫉妬させたら。…何や嫉妬で狂いそうになるやないか。お仕置き、せな…アカンなぁ…。今日寝られんまで貪ったるで」

飛鳥は先程の無表情とはうって変わり、優しい笑みを浮かべた。
神ちゃんとは神の子の略で、結愛は自分の事だと悟る。

「会計?」

結愛は自分を持ち上げ、お姫様抱っこをしてるのが飛鳥だと知るとビックリした顔をする。

「本気で愛したる言うたやん。神ちゃんは俺だけに愛されて、俺だけを見てればえぇんよ」

飛鳥は結愛をじっと見つめ、永久の口づけにより赤く色づいた唇にキスをした。
まるで消毒するかのように、自らの舌を出して結愛の唇を何度も舐める。
自然と口を開く形となり、飛鳥の肉厚な舌が口腔内に入って来た。

「…んん!?」

最初から貪るような激しい口付けに、結愛の体が小刻みに震える。
口腔内を舐め回し、歯列へと舌を這わせれば、含みきれない唾液が結愛よ口角から溢れ出て来た。

「ふぅ、っ、…んんっ!」

結愛は飛鳥の舌の熱さと生き物のように動き廻る様に、口の中が麻痺したような感覚に陥る。
そして初めから貪り食うような、あまりの激しさについていけなかった。

「っ…!ふ、ぁ…っ」

結愛から洩れる甘い声に、飛鳥の鼓膜がぞくりと痺れ、歓喜する。
今、この声出させているのは紛れもなく自分だ。
そう思うだけで、先程まで黒く渦巻く汚い心が浄化されるような感覚に陥った。
腕の中で震える小さな体を逃さないよう強く抱きしめ、何度も舌を絡ませる。

「ん、っ…んんっ!」

結愛から洩れる甘い吐息に、下半身が煽られる。
スラックスの中でぎちぎちと音を立て、膨らみ始める息子に内心苦笑いしたのだった。
一通り舌を絡めさせ、満足したのかゆっくりと飛鳥の顔が離れた。
すると二人の唾液が糸を引き、プツリと途中で切れる。

「消毒完了やな」

そう言って、結愛ごと自分のソファーへと座った。
向かい合わせるように脚を開かせ、ぎゅうっとその胸の中に再び抱き締めた。
それをポカーンと咲雨は見て、永久はニコニコしながら青筋を立て、ほとりは今にも殴りかかる勢いで飛鳥を睨み付けていた。

「……テメェ、何その汚ねぇ口で触れてんだよ…!」

ほとりが近づくと、結愛がブルリと体を震わせる。
不思議に思い、飛鳥もほとりもその顔を覗き込んだ。
すると顔を真っ赤にして、気持ち良さそうに瞳を潤ましているではないか。
これには男二人がゴクリと唾を同時に飲み込んだのだった。
何と言う色気を放っているのだろう。
まるで最中のような表情に、飛鳥はもちろん、ほとりも下半身直撃である。
飛鳥は鼻の下が延びる勢いで嬉しそうに笑みを噛み締めた。
自分のキスでここまでトロトロになってる姿はいじらしくて可愛いの一言だ。
そしてほとりはと言えば、風紀室で押し倒した時の表情そのままの結愛に、翻弄されるのであった。
今すぐにでも連れ帰って、ガンガンに犯したい。
泣いてすがっても逃がしてやらない。
もうライバルがこんなにいるなら、心か欲しいなど言ってられないと感じたのだ。
絶対使いたくないと思っていたテクニックを駆使してでも蹂躙してやろうと心に決めたのだった。

「……あのな、そこの二人。俺も同じ男だからわかるが、考えてる事が駄々漏れ過ぎるぞ。いや…、まぁ、健全な男子と言えばそうなのかもしれないが…。とりあえず、神の子を離せ」

咲雨がやっと正気に戻ったのか、飛鳥に手離すように伝える。
すると一瞬、子供が母親にすがるような表情を浮かべた飛鳥だったが、相手が咲雨だと知れば素直に応じ結愛から手を離す。

「恋愛感情がないのは俺だけだ。こうなっては埒があかないから仕方ないな。神の子は俺の膝に乗せるぞ」

そう言って、咲雨が結愛を背中から抱き締めるように膝に座らせたのだった。

「……屈辱的ですね」
「……、……役得とか思ってたら、…マジで絞める…」
「青ちゃん、それおかしいて。いくら男を恋愛対象にならんとわかってても、その選択肢、絶対間違うてるで…。ホンマ、天然…偉くおっそろしいでぇ…」

上から、永久、ほとり、飛鳥の順番で口々に言葉にするのだった。

「他に座る所がないんだから、ここしかないだろ。下心しかないお前らに神の子を任せられる訳がないだろうが」

咲雨は首を傾げ、曇りなき瞳で三人を見つめる。
その目は本当に純粋なもので、三人は同時に思った。


この天然が、と。


2025.01.03

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