嫁さんの悪巧み
どうりであの日、血だらけで帰って来た帝がたいそうご機嫌な訳だ。
こんなに可愛い子を見つけたら、そりゃ指輪を渡すわな、と上総は納得する。
ハニーを見つけたとずいぶん嬉しそうに語り、顔はデレデレと蕩けきっており、そりゃ見るも無残な程に気持ち悪かった。
それを上総が足蹴にし、しばらくストレス発散にいたぶってやったのは記憶に新しい。
普段なら殴り合いになるのに、その日の帝は気持ち悪いくらいに笑顔で自分のサンドバッグにされていたのだから、忘れる筈もなかった。
ふと上総は思う。
これはむしろチャンスなんじゃなかろうかと。
帝なら、四神相手でも関係なく欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるだろう。
例えそれが彼らを怒らせたとしても。
皇帝の証であるオニキスのシルバーリングが嵌められているなら、この手を使わずにいるなんて勿体無い。
上総も帝の右腕、トップがそう言う考えならばナンバー2もまたそうなのである。
欲しいものは奪えば良い、どんな事をしても、だ。
そう思ったら、笑いが止まらなくなった。
大好きなキャンディの事など頭にないくらいに、どうやってこの可愛い少年を拐おうか、しか考えられない。
久々に稲妻が走ったような出会いをし、好みのタイプがすぐ側にいる。
鴨がネギを背負って、自分のテリトリーの中へ無防備に入って来ているのだから仕方あるまい。
上総はニヤリと厭らしい笑みを浮かべ、今にも溢れそうになるヨダレをキャンディごと舐めとる。
口に広がる甘い苺の味。
目の前の彼もこんなに美味しいのだろうかと、心弾ませたのだった。
「俺もそれ持ってるけど、凄く使いやすいぞ、っと」
結愛が二つのパソコンで悩んでいるのを見て、上総は手前にある方を指差した。
「えっ、もうこの最新版を持ってるのか!?」
結愛が物凄い勢いで食いついてきた。
それを上総は目だけを狐のように釣り上げ、口元には優しい微笑みを浮かべる。
「そうだぞ、っと。パソコンや電化製品好きだから、出たらついつい買っちゃうんだな、っと」
「おぉっ、マジか!俺もそうなんだよ!金がないからそこまで徹底出来ないけど、一生懸命貯めて買うのが楽しくてなっ」
上総の言葉に、結愛は興奮したように目を輝かせる。
その姿が平凡な容姿とのギャップで、更に可愛さを増しているではないか。
上総の胸が大きく高鳴り、これまでにない早さで鼓動を刻む。
何だ、この光輝く少年の美しさは。
眩しいくらいの笑顔と、耳に響く心地好い声。
そしてウキウキとして飛び跳ねる様子は可愛いなどでは形容しがたいものだったのだ。
完全に胸を打たれた。
これはマズイ、ドストライクなんてそんな優しいものではない。
もうこの天使にメロメロだ。
「なぁ、もっと話したいから、お茶でも飲もうぜ、っと」
その言葉に、結愛は嬉しそうに笑ったのだった。
「おうっ、俺ももっと話がしたい!色々聞かせてくれないか?」
再び上総の胸が高鳴り、キュンキュンと愛しさで締め付けられる。
ここまでメロメロになったのは初めてで、もうどうやってこの愛らしい少年を自分のものにするかしか、頭になかった。
「っ…!可愛い、ぞ…、っと」
その呟きが結愛に聞こえる事はなかった。
早速オススメのパソコンを手に取り、ルンルンな結愛を上総は鼻の下を伸ばして、後をついて行ったのである。
旦那さん、おたくの嫁さんが人のものを横取りしようとしてますよ。
2025.02.13
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