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(とりあえず、朝は殺されるかと思ったが、案外、御子神が常識人で良かったわ…。謝ればすむとは思ってなかったけど。睨まれただけですぐに部屋から出てってくれたしなぁ…。あのままボコボコなゲームオーバーかとヒヤヒヤしたが、手当たり次第な奴じゃない事がわかって、一安心だな。俺もたくさんの不良見てきたけど、やはり根は良い奴が多いんだよ。親子程に歳が離れてるから、そこまで怖いって思わないし、まぁ、どうにかやってけるだろう。)
そうこうしてる内に、教室についてしまった。
結愛は成績もだが、家柄も普通な為、クラスランクはAだ。
そして、当然ながらほとりは不良なのでF。
そんなクラスも家柄も違う自分らが同室な訳で、この二人一組の部屋の組み合わせシステムは、多分ランダムで決められているのだろう。
黒板に書かれた席の通りに座ると、一番後ろの窓際に少し近い場所だった。
カバンを置いて座ろうとすると、隣の席のクラスメイトが声をかけてくる。
「おはよう、もしかして例の外部生か?俺は夜蔵篠、よろしくな」
大和撫子がいたら、こんな人間を言うのかもしれない。
そう思う程に大人しめで綺麗な顔をしており、だがここにいる奴らに比べて派手じゃないから一見美形と気づかない、そんな感じだ。
「あぁ、外部生か、そう言うんだな。おはよう、俺は知ってるかもしれないが、本郷結愛だ」
篠に握手を求められたので、普通にその手に応えるように添えた。
すると、やはり男なのだと思わせるしっかりした大きな掌の感触。
そして目の前の人物に視線を向けると、意外そうな顔をしている。
結愛は不思議に思い、首を傾げた。
「や、悪い。…その外見に似合わず可愛い名前だな、なんて思った訳じゃなく。見た目通り、本当に普通なんだなと、逆に驚いただけだ」
女っぽい名前だなと思っていたんだな、と思うと同時に、普通と言われ、何かディスられているのではと眉間に皺がよる。
「あ、そうではない、本郷を乏したとか、弄ったとかではなくて…。ここは少し変わった閉鎖空間だから、…こう、本郷みたいのが新鮮と言うか…」
特に焦った様子も見られないが、結愛が気分を損ねたのがわかると、表情からはわからないが誤解を解こうとしているのが必死に伝わって来る。
だから結愛も一瞬考えたが、バカにした訳ではない事を理解して警戒を解く。
「外部生に説明するには酷かもしれないけど、ここは男子校だ。そのせいで男同士の恋愛が多く、最初はみな有り得なと言うが、…こんな孤立した空間に閉じ込められると、恋愛対象が女じゃなく、ここにいる人間に向くのが当たり前となる」
(あぁ、そうだったわ…。さっきまで忘れてたけど、このゲームは男同士の結構派手めの恋愛ゲームだったんだよな。朝からトリップした事や、同室が御子神だったから、それ所の騒ぎじゃなかったな…。え、これで俺はハッピーエンドかスペシャルエンドを迎えなきゃならいって事なのか!?確かこのゲームクリアしなきゃ終わらないシステムだったよな!?今さらながら、スゲェ場面に直面したよ。マジか…、しんど…)
結愛が何も言葉を発しず、難しい顔をしたかと思えば、急に百面相をするので、思わず篠はふっと鼻で笑ってしまった。
また気分を害されるかと、慌ててポーカーフェイスに戻すが、既に時遅し。
結愛に見られてしまっていたのだ。
「あ、そうではない…」
やはりまずかっただろうか。
機嫌を損ねさせたかと、また否定をしようとする篠だったが、目の前の結愛は楽しそうに笑っていた。
「あ〜、いや、もう何かわかったわ。夜蔵、お前、悪気はないんだよな?別に相手を貶してる訳じゃないけど、あんま顔、変わらねぇから誤解されやすいんだよな?いやぁ、無表情かと思ったけど、笑うと可愛いじゃんかよ」
そう言って、篠の肩に手を置いて、優しくポンポンと叩いた。
それに驚いたのは目の前の少年と、周りにいるクラスメイト達だ。
ざわっと教室がざわつき、結愛は何だ、とばかりに辺りを見回した。
そして、男子校にしては容姿がやけに整ってるのが多い事に気づき、篠の耳元でそっと囁く。
「…何か、俺、…変な事言ったか?」
周りの目もあるから、篠にだけ聞こえるように声かけたのだが、それが更に周りのクラスメイト達を動揺させる事になるとはつゆ知らず。
周りは更にざわめいたのだった。
そして、篠自身も表情こそそこまで変わらないが目を大きく見開いた。
「え…?」
もう、何が何だかわからないとばかりに戸惑う結愛。
何故、周りだけではなく、篠までもがこの態度なのだろうか。
それもそうだろう。
結愛本人からしたら、ごく当たり前の行動でもこの学園の生徒からしたら、それはもう大変な事態なのだ。
いくら篠が外見的に普通と見られていようが、それでもそれなりの人気はあった。
表だってではないものの、陰ながら応援している、または恋をしている生徒もいるくらいに。
そして、小学校からエスカレーター式で、この学園にいるのだから、親衛隊はいないものの、ファンはそこそこいたりするのだった。
2024.08.09
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