tori


訪問者1


ウィルが玄関のドアを開ければ、仕事仲間であるギルバート・ラグナスの姿があった。
黒縁眼鏡の金髪の長い髪を後ろで縛り、茶色のスーツ姿の男前な顔と体つきだ。

「こんな時間に悪いな。何度お前に電話しても出ないって、ボスがキレてたぞ。急ぎで悪いんだが、俺達、ブラッディローズ専用対策本部のメンバーに招集された。来週から日本チームと合同になった」

ギルバートの言葉に、ウィルの目が大きく見開く。

「……は?俺達って、俺もか?ブラッディローズって…嘘だろ?日本で有名な殺し屋じゃないか…」 

ウィルは信じられないと動揺を隠せず、目が左右に動く。

「当たり前だろ、じゃなきゃ、こんな夜遅くに男の家なんか来るかよ。しかもこんなゴツくて可愛くもない筋肉マッチョ…」

本当に嫌なんだろう。
ギルバートがむさ苦しい男の家になど、お願いされたって来るタイプではない。
女の子大好きの、しかも女子高生好きで日本人がタイプだと言う性癖を持つ残念な変態だ。
ロリータだったり、成人していない女の子が物凄く好みらしい。
ゴスロリやメイドなど。

「ボスからの電話、あとでわびでも入れとけよ、久々にカンカンだったからな。まぁ、俺もカンカンだけどな。けど、日本に行けるんだ、今は気分が良い。許してやるよ」

日本女子、童顔のスレンダーが大好きなギルバートにとって、この任務は最高のご褒美なのだろう。
その証拠に本人も言うよう、すこぶる機嫌が良い。

「…ボスには後で電話する。けど、俺はいいが甥が…」

ぶつぶつと独り言を言うウィルに、ギルバートは中に入るぞっと言い、勝手に入って来てしまう。
慌てて止めようとするも勢いずいた同僚を止める事が出来ず、しかも先程の行為もあり紫は未だに火照ったような危うい色気を放っている事を考え、何がなんでも会わせたくなかった。
甥とは伝えていたが、日本人とは言うてない。
何故ならば、日本大好きのギルバートに伝えたら、紫にべったりする事は否めないだろう。
それどころか、紹介しろとか、無理な要求をするに決まっている。
それは何が何でも避けたかった。
そして、一番は会わせたくないのだ。
それはウィル自身何でなのか、未だに不明だが、どうしてもギルバートと紫を会わせたくなかった。
それが本音だ。

「ギル!!待て!!」

ギルバートをギルと言う愛称で呼んでおり、男の後を慌てて追った。

「やぁ!!ウィルの同僚のギルバートだ!お前には悪いが、同居を解消してくれ!」

ギルバートはバターンと音が鳴る程にドアを明け、同居人がいるてあろうリビングへと入って行った。
男だとは聞いていたし、同居人と言うので、自分等と同じくらいの年齢、または少し年下なのだろう程度に思っていたのたが。
そこにいたのはすらりと細身のモデル体型のような、幼い顔をした少年の姿。

「……ん?」

ギルバートは思いもよらない紫の姿に面食らう。

そして頬は赤らみ、決して可愛いとは言えない平凡な少年なのに、情事を思わせるようにティーシャツからは片方の肩が見え、ボクサーパンツから覗く陶器のように白く長い脚。
黒目黒髪の程よく健康的な肌に比べ、出ている肩や脚の白さは何やら行けないものを見てしまったような感覚に陥った。

「あ!俺、ウィルの甥の有須川紫です。いつも叔父がお世話になってます。…えっと、あの…同居は解消出来ません…。まだ俺、1人で生き行くのは無理で…」

2人の会話が聞こえていたのだろう。
ウィルが警察官なのは知っていた。
そして優秀なのも。
けど、こうして面と向かって出て行けと言われるとは思っておらず、紫の目頭がじわりと熱くなる。
本来ならば父親の側にいなきゃならないのに、叔父に育てられている手前、申し訳ない気持ちはずっとあった。
そこを突かれてしまった紫は悲しくて、虚しくて、悔しくて、自然と目線がギルバートから外れ、足元を見てしまう。
ウィル同様に身長が高い男から視線を浴び、いたたまれなくなった。

「ギル!!紫になんて事を言わせるんだっ!!」

ウィルは紫がどんな顔をし、どんな気持ちで自分の置かれた環境を伝えたのか、それも不本意な形で全く面識の無い他人に。
それがどれ程、思春期で難しい年頃の少年の心を傷つけたのか理解すると苦しくて仕方なかった。


2024.08.08

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