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バキッと聞いた事のない骨を砕くような音と共に、ソファーごとひっくり返る大きな音が響く。
「ユカっ、大丈夫か!?」
ウィルは自らの上着の袖で紫の唇をごしごしと拭う。
何度もされて、紫が痛いって言えばピタリと止まった。
「すまない、ユカ…。赤くなってしまったね…。舌は?舌は入れられてない?」
その言葉にこくりと頷き、ウィルは心底安心したように紫を抱きしめる。
細い腰に腕を回せば、ティーシャツの裾が持ち上がり、ボクサーパンツが見えそうで見えない絶対領域の太ももが露わにされた。
「はぁ、ユカリ…何て悩ましげな格好なんだ。その脚を舐めたいよ」
はぁはぁと興奮するギルバートの声に、紫がギクリと体を固まらせ振り返った。
そこにいるのは自分を性的対象として見る、男の熱い瞳。
ギラギラとした見た事もない欲情した顔に、体を震わせた。
「ウィル、わざとなのか?俺にこんな可愛い子を会わせなかったのは…。男なんて興味なかったが、こんな細くてスレンダーな体してるなんて…堪らないな」
そう言って、自らの唇をぺろりと厭らしく舐めた。
「ふざけるな!!!ユカをそんな目で見るな!!」
ウィルが自らの体で紫を隠し、ブチギレる。
「いつも俺を変態、変態言う癖に、自分の方がそうじゃないか。あんな情事の後を思わせるような格好させて…、お前こそこの小さくてぷっくりした唇や体を貪ってたんだろ?会った時にわかったよ、普段のお前からはあり得ない色気がぷんぷんしてたからなぁ…。こんなに可愛い子なら、俺だって同性でも構わない、そう思ったよ」
その言葉に絶句する。
確かにギルバートの言葉は正しかった。
紫に少しお灸を据えるつもりで教育してたが、何故か止まらなかった記憶が蘇る。
「ユカリは何歳かな?小学生?いや、日本人は本当、可愛くて幼くて、年齢よりもずっと若く見えるけど、さすがに中学生かな?」
ギルバートの言葉に、紫とウィルが同時に固まる。
まるでその言い方だと、紫がまだ小さい少年だと思った上で手を出したのは明白ではないか。
「……は?」
ウィルの反応に、ギルバートが今度は面食らった。
「え、ちょっと待て。ギル、ユカはお前好みのロリコン…いや、ショタコンではないぞ」
「は?」
「いや、だから、ユカはもう高校生だよ」
その言葉に今度はギルバートが声を上げた。
「いや、まぁ、ユカは日本人にしては少し幼く見えるからなぁ…。勘違いしても仕方ないのか…」
ギルバートはその場で土下座した。
「っ、すまない、ユカリ!!俺は君が小さいと思ってつい…!まさかもう高校生だなんて…そんな大きな子になんて事を…」
それはあの反応である。
ずいぶんピュアだと思っていたが、高校生になって経験があまり無いのかもしれない。
いや、でもあの2人からは情事特有の雰囲気が、そう頭の中でぐるぐるしてれば、紫がウィルの腕から抜け出して、ギルバートの側でしゃがみ込んだ。
「…ちょっとびっくりしたし、あんな、事…されたのには怒ってるけど…もう次からしないでくれるなら、いいよ」
にこっと微笑めば、平凡だった顔が華の咲くような美しいものへと変わる。
「それに…ウィルとは変な事してない、よ。ちょっと俺が無防備?危機能力ないから、教えてくれてただけで…」
ギルバートとウィルを交互に見て、誤解だと伝える。
高校生だと知った今でも魅惑的なスレンダーな体と可愛らしく恥ずかしそうにして話すたどたどしい言葉に、ギルバートの胸が射たれたのは間違いない。
高校生だと知っても、男だとわかっていても、少しだけ気なる存在になってしまった。
ウィルも先程の紫とのキスを無かった事にしてくれる方向で安心しつつも、ギルバートとのキスシーンが未だに脳から離れない。
イライラする気持ちを抑え、誤解だったなら仕方ないと思うが、ギルバートの表情を見てるとそれだけで終わらない気がして胸がチリチリした事に気づかないふりをした。
2024.08.09
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