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「今日、母さんがゆかの為に餃子と麻婆豆腐用意してくれてるから、来いよ」
いろはの言葉に嬉しそうに笑い、行く行くと応える。
だが、ふとして1人じゃない事に気付き、慌てて周りにさを見廻した。
「いろは、ごめん。俺、叔父さんと来てるんだ。だから、叔父さんもいいかな?」
申し訳なさそうに尋ねる紫に、当たり前だろって格好良く笑うものだから、尚の事嬉しかった。
「叔父さん、どこにいるんだ?」
紫の来た方向を見ても人々が行き交うばかり。
叔父らしき人が見つからない。
「アメリカ人なんだろ?楽しみだな」
いろはが心なしかわくわくしてるのがわかる。
人見知りなどなく、誰とでも仲良くなる親友のそんな所も好きな部分だ。
「ユカ!!」
大声で呼ばれ、紫が声の方に顔を向ける。
すると物凄い速さでウィルが駆けて来たのだった。
いろはは結愛が手を振る方向を見て、ぎょっとする。
想像していたよりもがっちりとしており、怖い顔をした巨体が自分をまるで親の仇のようにして睨んでいるからだ。
いろはは自分は知らないうちに何かしてしまったのかと、冷や汗を流す。
こんな風に人から敵意を向けられて来なかっただけに、どう反応して良いのかわからなかったからだ。
「ウィル!!俺の大好きな親友、いろは!!」
早く早くと嬉しそうにウィルに手招きする。
すると先程まで人を殺めそうな顔で睨んでたのが嘘かのように、優しい顔つきになった。
「1人で行くなといつも行ってるだろう!どうしてそうやって後先考えないんだ!」
「ごめん!いろはに1秒でも早くあいたくて」
英語だから何を言っているかわからないが、まるで親子のような2人にいろはの口元に笑みが浮かぶ。
日本で色々あった紫が、こうして笑ってる事が嬉しくて堪らなかった。
もうあんな風に泣きじゃくる親友を見たくない。
1人になんて絶対しない。
2度と会えないかと思っていたから、帰って来てくれて本当に嬉しかったのだ。
「ウィルには話してると思うけど、いろはだよ。
それでこっちが俺の叔父さんのウィルだよ」
大好きな2人を会わせる事が出来て、紫の頬が真っ赤に染まる。
嬉しくて堪らない。
幸せ過ぎてどうしよう、そんな声が2人に聞こえるようだった。
「きみがいろはか。さっきはこわいかおをしてしまって、すまない」
そう言って、人好きしそうな笑顔で握手の手を求めた。
ウィルは紫と会話する為だけに日本語の勉強をしていたから、日常会話なら余裕で話せるのだ。
「凄い、日本語だ!上手ですね。こちらこそ、急にラインしたせいでゆかとはぐれさせてしまって、すみません」
いろはは深くお辞儀をして、ウィルの手を握った。
とても好青年である事に、ウィルの顔が緩む。
「ウィルさん、突然ですが、母がゆかの好物を用意してるので、是非、我が家に来て下さい。長旅でご飯もどこがで食べるんですよね?それならば俺の家で食べてって下さい」
その言葉にウィルは嬉しそうに微笑んだ。
日本に来て、右も左もわからない状態だったから、実は少し不安に思っていたが、こんな風に暖かく迎え入れてもらえるなんて、と感動するのだった。
2024.08.26
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