野上家へ
空港からいろはの家は近かった。
凄い時間かかると思ってただけにびっくりしてしまう。
しかもタクシー代もいろは持ちだ。
何てありがたいのだろうか。
紫とウィルは物凄い感謝を伝えたのだった。
「きゃあぁぁ!!紫くん、全然変わってないわねぇ!!本当可愛い!!」
いろはを女性にしたくらい美人のお母さんが出迎えてくれた。
白のフリフリエプロンをつけ、花柄のワンピースがとても似合っている。
「あなたがウィルさんね、えっと、…え!?どうしよう!!凄いイケメン!!しかも大きいわ!!更にどうしよう!!私、英語話せないわ!!」
1人パニック状態で、お玉をもって玄関でウロウロしてる姿は本当に少女のようで可愛らしい。
「さいかさん、大丈夫だよ。ウィルはこう見えて日本語凄く上手だから」
その言葉に、さいかはほっとしたように笑った。
「はじめまして、ユカリのオジのウィルです。いろはくんからおさそいうけて、こちらまできました。さいかさんがユカリのダイコウブツをつくってくれるときいて、ありがとうございます」
イントネーションはやはり外国人そのものたが、すらすらと話す日本語は凄かった。
「ウィルさん、日本語上手!!凄いわ、凄い!!さ、2人とも上がって!!」
花が咲いたように笑うさいかを見て、ウィルは本当に紫の周りの人間は暖かくて優しい人ばかりだと感動したのである。
そして、ここにギルバートがいなくて良かったと。
多分だが、さいかよりもいろはが好みだろう。
スレンダーでいて美人だ。
少し筋肉はあるものの、いろはをギルバートには会わせてはいけないと感じるのだった。
さいかの作るご飯はどれも格別に美味しかった。
紫とウィルはばくばくと食べ、中華たけかと思いきや、ウィルの為にステーキやハンバーグも用意してくれていたのだ。
もし中華が嫌いだったら大変だと、慣れ浸しんだ味を。
その心遣いに感動を覚え、この親子は本当に素晴らしい人達なんだと再確認したのだった。
「ウィルさん、紫くん寝ちゃったから、良かったら今日泊まって行って」
さいかの言葉に、ぎょっとする。
初対面の、しかも紫の叔父だとはわかっていても外国人を泊まらそうなんて、どれだけ懐が深いのだろうか。
さすがにそこまで甘える訳にもいかず、お断りするも紫が全く起きる気配がない。
仕方なく抱き上げるといろはまでもが大変だからと、引き止めたのだった。
紫を抱えて、スーツケース2つはさすがのウィルでも無理があるかもしれないと感じ始め、2人の好意に甘える事にしたのだ。
「今日は親父が出張でいないから、ウィルさんはその部屋を使って下さい。おれはゆかと久々に一緒にいたいので、同じベッドに寝ます」
そう言って、紫を抱えたウィルを部屋まで案内した。
この隣がいろはの部屋だと伝えられ、紫をベッドに降ろす。
綺麗好きなのだろう。
必要最低限のものしかなく、家具もグレーと紺で統一されていた。
「今日はとてもおいしかったし、たすかったよ。あたらしいいえにいっても、にづくりしないとねるばしょにもこまってたからね。ユカのともだちでいてくれて、ほんとうにありがとう」
ウィルは心底嬉しそうにいろはにお礼を言い、本日寝かせてもらう寝室へと入って行った。
そんな後ろ姿を見て、いろはの顔が少しだけ曇る。
「……」
ドアを閉めて、紫が眠るベッドへと座った。
そして紫の寝顔をしばらく見て、優しい手つきで髪の毛を梳く。
さらっと流れる黒くて柔らかい髪。
スピスピと寝息をたてて、無邪気な顔をしてる親友に自然と口元に笑みを浮べた。
「ずっと会いたかった。ゆか、おかえり」
そう言って、紫が起きるまでずっと側に寄り添ったのだった。
2024.09.13
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