tori


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エレベーターの前には神秘的なまでの美しい少年が立っていた。
もしも効果音をつけるなら、キラキラ、である。
なかなか来ないエレベーターをボーッと見つめ、何を考えてるかわからない表情でズボンのポケットからスマホを取り出した。
LINE画面にすると、一つだけ名前が表示されている。
それをタップしようとすれば、通知音が鳴り小さな溜息を吐いた。
岸と書かれたLINEを開けば、今日のスケジュールがビッシリと書かれている。
目元をピクリと動かし、下へとスクロールすれば、ある一ヶ所で止まった。
調理室にて食事。
その文字を見て、先程までのやる気のないオーラから一変、少年は目元を細め、それはそれは愛しい人に向けるような笑みを浮かべたのだった。
すぐさま先程来たLINEを削除し、画面に残るのは兄と書かれた名前のみ。
これで良いのだ。
彼には兄以外、必要ないから。
この世に存在するのは、兄と自分だけ。
むしろ、兄だけでも良いと思える程に他のものが見えていないのだった。
崇拝、いや、そんなレベルではない。
もう兄無しでは息をする事も出来ない程に、体の一部となり、触れたい、抱きしめたい、口づけたい、舐め回してトロトロになるまで愛したい。
自分無しでは生きられないよう、誰にも見つからない場所へ隠して、永遠に二人でいれたら良いのに。
そう思う日々、大きくなればなる程に募る想い。
隠しきれない本能が剥き出しになる。
最近、抑えが効かない。
無理矢理にでも犯してしまいそうになる。
それをどうにかギリギリの理性で押し留めているが、いつ限界が来るかわからない。
そんな事を考えていれば、チンとエレベーターが到着した。
ゆっくりと扉が開けば、そこには学園の頂点にいる生徒会長の姿が。

「おはよう、…今日も難しい顔をしてるな」

開口一番に先程までの思考を悟った男に、よく表情をかえないのに自分の事がわかるなと感心してしまう。

「ガス抜きくらい、しろよ?」

男前で気さく、面倒見が良い男、それがこの学園の頂点に君臨する生徒会長、油井ゆいとまりだ。

「………」

そんな泊が誰よりも気にかけ、可愛がっている少年。
彼こそが今年入学したばかりの新入生、富樫とがしなるだった。
この二人が常に一緒に行動を共にしているのは誰もが周知しており、更には泊自らが生徒会に入るよう足蹴なく通った事で有名である。
何度も口説いては振られ、その繰り返しを続ける事、二ヶ月。
ようやく泊の熱意と言う名の執念に根負けし、これ以上しつこくされても迷惑だと観念し、生徒会書紀ならやっても良いとOKを出したのだった。
泊本人としては副会長をやらせて、自ら育てるつもりだったが、それは成により全力拒否。
理由としては兄との時間がとれないから、だそうな。
いや、知らねぇし、と泊は思ったがどうやら成にとっては本気らしい。
面倒くさいと思ったものの、興味が湧いたのだ。
この欠点無しのミステリアスな少年が執着する程の兄。
どんな人間なのか、見てみたくなったのが本音。

「俺で良かったら、いつでも聞くから、言える範囲で話せよ」

成の頭を優しく撫でて、優しく微笑んだ。
知りたいのもあるが、何よりこの少年が酷く可愛い。

「………」

成はゆっくり顔上げ、泊を見つめた。
そしてそのまま近づけば、あまりの近さに大和がどうしたと目を微かに見開く。

「……会長…俺…」

成は気づいていない。
ゆっくりとエレベーターの扉が開いた事を。
そして、無意識に泊を壁際においやり、壁ドンをしていた事を。
更にはキスが出来るくらいまで二人の距離が近い事を。

「富樫、今は…」

憲武が声をかけた瞬間だった。
エレベーターが完全に開き、会長親衛隊隊長と副会長が泊の登場に笑顔で迎い入れた顔のまま固まる。
そして徐々に表情が笑顔から驚愕へと変わり、声にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない。
その間も成は泊を壁ドンしたまま、親衛隊達など気にする素振りなどなく、だたひたすら目の前の男を見つめ続けたのだった。
それが更に誤解を生むなど思いもせずに。


成と泊を応援する隊が結成されたのは言うまでもない。


2024.09.09

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