tori


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ぶるぶる震える平の姿に、思考が一瞬停止してしまっていた大翔。
ハッとして、すぐさま平を抱き起こした。

「んっ…、やめっ…ぁっ……、ん!」

物凄い快感が体を包み、子供のように嫌々と顔を振った。
抱き上げた体がとても熱く、平の顔を見れば目に涙を浮かべ、目元を赤らめ、唇を真っ赤にし、何も映してない瞳で大翔を見てくるではないか。
それを目にし、大翔が物凄く動揺した。
目を大きく見開き、信じられない物を見るかよのうに。
バタバタと自分の腕の中で暴れる様子に、絶望感を抱いた。
どんな事があっても拒絶などされた事がなく、いつも一番最初に頼ってくれたのに。
それがどうだろう、何かあった事は明確であるが、平は大翔を全く瞳に映してないではないか。
きっと自分に触れる者が誰なのかわかってないのだ。
正常ではない、何者かによってとんでもない事をされたのだと理解した。
助けを求めてくれると信じて疑わなかったのはおごりだったろう。
だけど、誰よりも近くで守り、寄り添って来
たからこそ、ショックだったのだ。
そして、そんな風に思っているにも関わらず、柳から洩れる甘い吐息、声、その誘うような表情、全てに反応している自分がいた。
そんなはずはない。
とても好いているが、性的な意味でではかったはずだ。
なのに、今はどうだろう。
この目の前にいる友人をめちゃくちゃにしたくて、堪らない衝動にかきたてられるのだった。

「っ…!」

そんな浅ましい思考を振りはらうよう、自らの頭を振り、煩悩をかき消した。
そして平をお姫様抱っこしたまま、思い切り抱きしめたのだ。

「大和くん、しっかりして下さい!僕です、君の友人の岸大翔です!」

平の耳に聞こえるよう、何度も大きな声で名前を連呼した。

「っ…?………、き…し…?」

やっと正気に戻ったのか、平は暴れるのを止めるとゆっくりと大翔のワイシャツを掴んだ。
そして上目遣いで、怯えるように確認すれば、いつも一緒に生活し、どんな時も側にいてくれた同室者兼友人の大翔だと認識する。

「っ…き、しっ…!……きし、岸っ…!!!」

ブワッと子供のように平は泣き出し、目の前の安心する男に抱きついた。

「っ!?」

それには大翔が驚愕の表情を浮かべたが、ようやく平が自分を他人だと思わず、安心する相手であると認識してくれた事に喜びを感じたのだった。
先程まで絶望感に苛まれていた、凍てついた心が一瞬にして溶けたのだ。

「大和くん、もう大丈夫ですよ、部屋に戻りましょう」

優しい声に、平がホッと一安心する。

「んっ、き、しっ…!…き、…しぃ…っ!!」

自分の名前を何度も呼ぶ甘い声。
舌っ足らずで、甘える素振りがまた庇護欲をかきたてられる。
震えながら必死に抱きつく様は、大翔にとって自覚せざる得なかった。
愛しい、何て愛しいのだろうか。
とても可愛い、触れたい、口づけたい、自分のものにして、めちゃくちゃにしたい。
そんな感情が己の心を支配したのだった。


インテリ眼鏡くん、色々と覚醒。


2024.09.29

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