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「王子っ…」
結愛は真琴を吹奏楽部の防音室へ連れて来ると、その鍵を内側から閉めた。
息が整わないが、そんな事は知ったこっちゃない。
男は度胸だ、と意を決した。
「結愛?」
先程まで殺意に満ちていた瞳が驚きに変わる。
そして、結愛は今生で一番恥ずかしいと思われる、上目遣いをし、真琴を見上げたのだった。
「千尋とは、昔からの幼馴染みで、だから…右京くんの思うような事は本当に何もないんだ。俺が好きなのは…王子、ううん…真琴くんだけ」
そう言って、顔を真っ赤にして、ふいた。
すると王子様は目を大きく見開き、驚きの表情へと変わる。
更に、いつも何を考えてるかわからないような顔がどんどん赤くなり、ゴクリと唾を呑み込んだ。
結愛は不思議に思い、見上げる。
次の瞬間には後悔したのた。
あの中性的で美しい顔が、ギラギラした雄の顔をして自分を見下ろしていたから。
見てはいけない、目を合わせてはいけない、と思ったがもう既に時遅し。
バチリと真琴と視線が合ってしまった。
「…え」
意味がわからんとばかりに、結愛が目を大きく見開く。
後退りするも、同じ歩幅で真琴も追いかける。
「名前、初めて呼んでくれたね。凄く嬉しいな。好きだよ…、僕は君がとても大好きだ」
両肩を掴まれたと思ったら、そのまま顔中に口付けがふってきた。
「おぉっ!?」
余りに突然の事に、逃げるようとするも、がっちり掴まれた腕が逃がしてくれない。
この細い体のどこに、そんな力があるのか、さすがテニス部と、こんな時に感心すらしてしまう。
「好きだよ…誰にも見せたくないくらい」
リップ音を鳴らしながら、どんどん唇に口付けが近づいて来る。
それを避けようと思うが、ふと脳裏にバッドエンド、またはゲームオーバーの文字が過った。
だから、結愛は真琴からのキスを真っ向から受け止めたのだ。
「ぅんっ…」
最初は小鳥のような可愛らしい触れるだけの口付けだったが、結愛が逃げない、受け入れてくれたと思うと、真琴の想いが一気に膨れ上がった。
壁に両手を縫い付けるようにして、壁ドンをしながらキスを深めていく。
「はっ…」
「んっ、ふぅ…」
こんな熱烈なキスを現世でもご無沙汰な結愛は、驚きが隠せない。
現実世界でもオタクだった為に、こんな濃厚なの彼女にすらしたことないわ、とそんな呑気な事を考えてしまう。
その間に、どんどん口づけは激しさを増した。
そして何より、このゲームにはこんな激しいキスシーンなどなかったはずなのに、何かがおかしい。
その間も真琴は角度を変えながら、何度もキスをし続ける。
その度に、結愛からは甘い声が洩れ、真琴からも色っぽい吐息が洩れた。
どのくらい唇を重ねていたのだろうか、結愛が自分の体を支え切れなくなって、足をガクガクさせながら座ろうとする。
それを止めようと、真琴の腕が腰に回った。
「はぁっ…はっ」
結愛が空気を吸うために大きく呼吸する。
それさえも艶めかしく、真琴の喉が再び鳴った。
このまま、誰にも触れられないように、見られないように監禁したい気持ちにかられる。
だが、あんな風に可愛く、そして顔を赤らめて上目遣いで見てくれるのは、自分が嫉妬して、愛を表現して欲しかった事を理解してくれたからこそ、彼の色っぽい姿が見れるのだと思えば、嫉妬の一つや二つはまだ堪えられる、そう思った。
「結愛、ありがとう。本当に可愛くて、食べてしまいたいくらいだよ。もっとキスして、良い?」
食べてしまいそうって、冗談に聞こえないよ…。あんた、ガチやろがっ!!オーマイガッ!!彼のフィルターが外せない。
フラグがたった。
2024.07.027
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