tori


人、拾いました


村田むらたしゅう…黒髪、黒眼のどこにでもいるような見た目平凡地味な高校教師。この世界に来て、酒屋の亭主バルドに拾われる。


この世界に来てから、どれくらい経ったのだろうか。
35歳になっており、3度目の冬を経験していた。
外は雪が降っており、気温はマイナス20度。
もこもこのダウンジャケットと手袋のお陰でどうにか外に出る事が出来た。
今日は良い肉が入ったからと昨日連絡が来て、バルドに言われて買って来た帰りである。
さくさくと真っ白な雪を踏んで歩いていたが、急に盛り上がった何かに乗り上げ転んでしまった。

「っ…いってぇ…!」

見事顔から雪に飛び込み、肉は袋から飛び出し、辺りに散乱してしまった。
寒いのと痛いのと、この現状に秋の顔は真っ青になっていく。

「あぁ…!もう、何でこんな…」

泣きそうになりながら、飛び散った肉をひとつずつ拾っていく。
個入り包装してくれているので、汚れずにすんだ事が幸いであった。

「それにしても何でここだけ…」

そう秋が呟き、自らの下を確認する。

「………は?」

雪で覆われているが、隙間から見える明らかに人の手。

「え!?ちょっ…!?」

慌てた秋は必死に雪を掻き分け、人らしきものを掘り当てる。
そして予想は的中しており、青白い肌をした、美青年がいたのだった。

「えぇぇ!!!?何でぇぇ!?」

顔に手を添えれば息をしており、体は冷たいものの、まだそれ程時間が経っていないのだろう。
肉と青年を天秤にかけ、命より重いものはないと判断。
肉は人目につかない木の幹に埋め、青年を背負った。
秋の身長は高いとも言えないし、体つきもがっちりしてる訳でない為、この青年を引きずるように背中に抱えるのがやっとである。
しかも気づかなかったが、かなり身長が高く、筋肉質で引き締まった良い体をしていた。

「お…、重い…」

ここに来る前は教師をしており、生徒をこうして抱える事もよくあった。
だが、さすがにここまで巨体な体は初めてであふ。

「いやぁ…、おじさんには…きっつー」

独り言を話し、沈む気持ちをどうにか抑える。
バルドの所に連れて行けば、きっと自分の時のように助けてくれる筈だ。
そう思い、自分の雇い主を思い浮かべ、酒場へ向かうのだった。


2025.04.24

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