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生徒会室ではパソコンのキーボードを高速で叩く音だけが響き渡っていた。
静まり返る室内、誰一人として言葉を発する余裕すらなかったのだ。
暗い室内に、3つの光だけが灯され、カーテンを開けてない事すら気づかない程に没頭しているのが見てとれる。
その異様な光景と行ったら、不気味であり、何者も寄せ付けないオーラを放っていた。
そんな息が詰まる状況を打破するのが生徒会会計である、大友飛鳥だ。
生徒会入りと言うだけあって、185cmの引き締まった肉体。
黒縁眼鏡越しからでもわかる整った容姿はミステリアスの極みと言うくらい、雰囲気すら格好良いのだ。
更には黒髪パーマが色っぽく、高校生に見えない程に全てが出来上がっているではないか。
街を出れば逆ナンのオンパレードで、口から生まれたと親から言われるくらい、話術もだが、スルースキルも優れていた。
「咲ちゃん、自分疲れたでぇ…。偉い甘いココア入れてくれへん?」
飛鳥は関西出身であり、こちらに越してきてからも長年使っていた関西弁を治す事が出来ずにここまで来てしまった。
いや、正確には治すつもりなど毛頭ない、なんだろうが。
「大友、そんな物ばかり飲んでいたら、糖尿病になるぞ」
咲ちゃんと呼ばれた青年、桜鹿咲雨は生徒会副会長だ。
口角の横にほくろがあり、切れ長のシルバーフレーム眼鏡の組み合わせが艶っぽくて、男女共に見とれてしまう危うい美しさがある。
飛鳥の暴走を唯一止められる、腐れ縁の幼馴染みである。
「咲ちゃんが自分の心配してくれてる!何や、感激やん、ホンマ最高やねんなぁ」
飛鳥はニコニコと少年のような笑みを浮かべる。
「ホクロくん、僕にもココア、入れて欲しいぞっと」
ホクロくんとは咲雨の事だろう。
ド派手なピンク色の髪の毛をし、チュッパチャプスを常に加えて、椅子に体育座りし、パソコンを打っている青年は、生徒会書紀の我妻上総。
青いサングラスをかけており、ロングシャツとシルバーアクセサリーのついたベルトをズボンにとおし、ピンクのクロックスを履いている。
「先輩、いい加減、その私服を制服にするの辞めてもらえませんか?さすがに生徒会の人間が制服をちゃんと着てないとなると問題になるんですよ。ココア入れますけど、貴方も糖尿病には気を付けて下さいね」
咲雨ははぁっと大きな溜息をし、給湯室へ向かった。
コップを手にし、ポットからお湯を出そうとしたら、急にドアが開く。
「ホクロくん、ミカちゃんからだぞっと。転入生来たらしいから、迎えに来てって言ってたぞっと」
「わかりました。どこに行けばいいんですか?」
「猿みたいに木の上にいるらしいから、見つける所から始まるんだぞっと。」
その言葉に、咲雨の顔が驚きに変わる。
「…は?」
「うん、お猿さんなんだぞっと。ココア、僕がいれるから、お猿さん探して来て欲しいぞっと」
はぁっと、本日何度目になるかわからない溜息をついたのだった。
「先輩、その最後の、一体なんなんですか?」
ふとした疑問を浮かべて、咲雨は上総に問う。
「僕の推しメンの癖だぞっと。真似してたら、取れなくなってしまっんだぞっと」
残念な子でも見るような目で、咲雨は上総を見つめたのだった。
「あんま、そんな風に人を軽蔑する目をしてはいけないんだぞっと。さすがの僕でも耐えきれないんだぞっと」
知らんがな、と思ったのは言うまでもない。
2024.07.09
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