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しばらく帝と他愛もない会話をした柳だったが、一方的に相手が話してるのを聞いてるだけなのに、何故か話が尽きない。
帝のペースに完全にのまれたのだろう。
先程まで、兄貴分のような無邪気な笑顔から一変、ニヤリと悪巧みするような笑みに。
「お、お出でなすったか。可愛い忠犬じゃねぇの」
心底嬉しいとばかりに、帝はある一点を見つめた。
柳がそちらへ視線を向けても誰もいない。
言い方からするに、風紀の人間が迎えに来たのだろう。
「………」
大きく風が吹いた瞬間、物凄い音が柳の耳に入る。
まるで何かが高速で飛んで来たようなそれに、ビクリと体が大きく跳ねた。
そして、パシンとどこかに当たったような破裂音。
「っ!あっぶねぇ…」
帝が顔のすぐ横で、片手を上げて苦笑いする。
「チッ…」
柳の視界に広がる白い物。
それが自分が着てる制服だと気づくのにら時間がかかった。
「相変わらず、血の気が多いなぁ。だから、好きなんだよ」
愉快とばかりに帝が笑い、顔の横にある片手に力を入れる。
するとギリリっと何かを握り潰すような音と共に、フワリと鼻腔に香るムスクの匂い。
柳が何が起きたのか、帝と香りの方を交互に見やった。
帝が手に握っているのは、人間の拳だ。
そして良い匂いのする方に視線を向ければ、そこにいたのはキラキラと太陽の光に反射した綺麗な銀色の髪、ウルフカットで襟足が肩につくくらいの長さの青年だった。
色素の薄い肌と同じくらい薄い灰色の瞳。
どこかのハーフなのかと思わせる程の整った顔。
ワイシャツにノーネクタイなので、学年はわからないが多分年上なんだろうなと思わせる長身だった。
「……てめぇ、…ふざけんなよ…」
青年から吐き出される言葉は小さく、なのに憤怒してるいのがすぐにわかる声質。
「忠犬、人にあたったら大変じゃねぇの」
そう言って、帝は柳をちらりと見た。
同様に青年も視線を向ければ、別に気にもとめない素振りで、再び帝へと視線を向けた。
「……それが、……どうした…」
御子神ほとり、風紀副委員長。
1年生にして、永久からの異例の抜擢だった。
「犬っころといい、忠犬といい、何でこうも血気盛んなんだろうな?ちゃんとカルシウムとってんのか?」
ほとりのこめかみに青筋が立つのがわかる。
「……、てめぇが仕事しねぇから、だろ……。……サボってんじゃ、ねぇ…」
ほとりの声にドスが入れば、帝は参ったと言わんばかりに握りしめていた手を振り払う。
「俺は干渉されたり、束縛されんの大嫌いだっての。本当、みんな、仕事好きだよなぁ?俺にこんな事してる時間ねぇんじゃねぇの?犬っころにこいつ、届けてやらねぇといけねぇんだろ?」
感謝しろよ、と言いたげに帝は笑う。
それすらもほとりは気に入らない様子だった。
「……次…、…会ったら…殺す…」
ひと睨みし、柳の胸ぐらを掴んで立たせる。
「……お前、…来い…」
そう言って、胸ぐらを掴んだまま、ほとりは歩き始めるものだから、柳は一生懸命首が締まらないように、足を動かした。
「またなぁ、外部生」
手をひらひらとし、帝は無邪気な笑顔で2人を見送ったのだった。
「何であんなのが良いんだろなぁ?普通の少年じゃねぇの。まぁ、そこが大企業のお坊ちゃまにしたら、相当な魅力なのかもなぁ。」
うーん、と首を傾げ、考えつかれたのだろう。
「今日も良い天気だな、もう一眠りするか」
と言って、再び寝転んだのだった。
2024.07.10
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