5
「それでこの大人数って訳かよ」
永久が舌打ちをして、ソファーにふんぞり返る。
とても嫌そうな顔をして、柳、ほとり、玄心、真琴の順で顔を見たのだった。
「まぁ、その方が安心だろぉな…。まだ殺人未遂も自殺もわかりゃしねぇんだから」
その言葉に、柳が首を傾げた。
殺人未遂や自殺とは何の事だ、と。
「……は?」
ほとりがあり得ないとばかりに柳に視線を向ける。
何故、そんなに驚いた顔をしてるのか未だに理解出来ず、再び首を傾げた。
「…おい、…こいつ…やべぇ、だろ…」
ほとりは小さく呟き、玄心に視線を向ける。
「御子神くん、そこが柳くんの良い所でもございますよ。おおらかで穏やかな性格は誠に癒やしかと思われます」
ふふっと花が咲いたように微笑む玄心に、ほとりがここぞとばかりに怪訝な顔をする。
「……そう言う、問題…じゃ、ねぇ…」
うんざりとばかりに大きな溜息をつけば、永久がすかさず話し始める。
「記憶ねぇのはわかってるけど、小鳥遊、お前何で階段から落ちたんだ?思い出せる事、洗い浚い吐けよ」
トントンと自分の前のソファーに座るようテーブルを指で叩く。
理解した柳がおどおどしながら座れば、その両隣に玄心と真琴も腰を降ろした。
隊長と副隊長に挟まれ、サンドウィッチ状態である。
何と居心地の悪さであろう。
男3人が肩を合わせて座るなぞ、どんな拷問だと思う柳だったのである。
(思い出すも何も、俺はその時はまだここにトリップしてないから、何も知らないんだけどなぁ…。えぇ…どうする?)
柳が俯き、真剣な顔で考え込んでいるのを見て、永久の目が鋭くなった。
「……お前、誰を庇おうが証拠は掴んでるんだよ。そこまでして守る必要ねぇだろうが…」
永久のこめかみに青筋が入る。
表情こそ険しいが、怒っていると言うよりも理解出来ないと言った感じだった。
「風紀委員長…どう言う事でしょうか?」
玄心が怪訝な顔をする。
永久の言い方からすると、柳がいかにも犯人を知っていて、そいつを庇っているとしか思えないからだ。
「まぁ、お前らは知っておいた方がいいだろな…。このポンコツを守るには必要な情報だからなぁ…。御子神、こいつらをモニター室に通せ」
その言葉に小さく頭を動かし、奥にあるドアを開いた。
「……来い」
一般生徒は立ち入り禁止とされている部屋のロックキーを解除すると、柳達3人を部屋に招き入れた。
真っ暗な中に広がる三面に渡るモニター画像の数々。
何列にも渡って監視カメラの映像が映し出されていた。
「あらぁ〜、こんな風にアタシ達の行動把握してたのねぇ。どおりで何でも知ってる筈だわぁ〜」
真琴はびっくりした顔をしているが、予想していたのだろう、演技がわざとらしい。
そして玄心も同じく心当たりがあったのだろう、無言で見つめていた。
柳に関してはさすがお坊ちゃま高校とばかりに驚きを通り越して、呆れてしまってるではないか。
BLゲームの世界だ、何があってもおかしくはないだろう。
「……こっちだ…」
ほとりが声をかければ、一番奥のモニターへと案内された。
そして椅子に座り、手慣れた手つきで操作する。
無数にあった監視カメラ映像が消え、画面一面に1つのモニターが映し出されてた。
普段は人が近付かない、外へと続く非常階段だったのだ。
「!!?」
玄心と真琴が息を飲んだ。
ピリっと張り詰めた空気で、柳は理解してしまう。
きっとこれはトリップする前の小鳥遊柳の最後の映像である事を。
2024.07.28
- 28 -
*前次#
ページ: