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永久によりモニタールームに来た千尋。
一瞬、この堅物に見せて良いのか戸惑ったが、いずれにしろ隠すのは無理があるだろう。
どこがから漏れるよりも、自分が見せた方が後々面倒臭くない事を悟る。
「犬神委員長、何故俺はここに?」
千尋は皆目検討つかないとばかりに目を白黒させていた。
「外部生の事を知りてぇんだろ?先程の詫びのつもりだ…。だが、心して見ろよ?」
永久の言葉に疑問符しか浮かばない。
だが、柳の事がわかるなら、それならば知りたい。
それが本音だ。
「始めに伝えてやる。小林…お前には少し、…いやかなり衝撃だろうな。そして、今後どうするかは俺には関係ねぇ…。てめぇの自由にしろ」
責任感が強く、真面目で誠実。
堅物でこの年代にしてはピュアな青年の今後に幸あれと心の中で呟いた。
「?あの、言われてる意味がわからないんですが…」
戸惑う千尋に対し、何も答えない。
永久がカーソルを操作をし、モニターに先程柳達に見せたものを再び映し出した。
そこには嫌がる柳に合意ではなく、無理矢理強姦しようとしている男の姿。
そして必死に逃げようと泣きじゃくる少年が自ら死を選んだ瞬間までもが映し出されていた。
「っ……!?」
千尋が普段見せないような、殺気の籠もった瞳に、今にでも人を殺してしまいそうな顔。
永久はどこか他人事のように見て、ひとり納得してしまう。
「……先程も言ったが、てめぇが今後どうしようが、俺はとめねぇ」
永久は何も語らない千尋に、やはりな、と心の中で呟いた。
正義感の塊のような男がこれを見て、平静を保てる訳がない。
次にくる言葉が安易に想像出来る。
「……この学園の治安を守る為、風紀して来ました。どんなに理解されずとも、それで良いと思ってここまでついて来ました…」
千尋らしくない、淡々とした話し方。
いつものように言葉に覇気がない。
「……大切な人、ひとりを守れないなら、俺は風紀を辞めます。小鳥遊を守りたい。小鳥遊を2度と傷つけさせたくない」
千尋の言葉に、お前ならそう言うだろうと、永久は目を閉じた。
ずっと我武者羅に正義の為に尽くして来た男。
どんな時も明るく、元気に嫌な顔をせずに仕事を全うしていた。
ひまわりのような笑顔の少年が挨拶した日を思い出す。
「そうか…」
永久は一言だけ告げ、立ち上がる。
「これから先、たくさんの人を救いたい…それに嘘偽りはありません。けど、俺が風紀でいる限り、小鳥遊だけを最優先に守りたいなんて出来ないのもわかってます。…本日限りで、風紀委員長を脱退します。今までお世話になりました。ありがとうございました」
そう言って、千尋は深々と頭を下げモニタールームから出て行った。
その後ろ姿を見て、永久は誰にも聞こえないような小さな声で呟く。
「……全て、俺の責任だな…」
あんな平凡が狙われる筈ないと高を括ってしまった。
この映像の少し前、ひとりの少年が助けを求めに来たのを思い出す。
「……」
あれはちょうど新学期が始まり、太陽の陽射しがきつい4月初旬頃だった。
永久は目をゆっくり開け、唇を噛み締める。
2024.09.07
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