3
真琴は入隊希望の生徒と面接をし、ようやくラストとなった時に見知った顔に目を大きく見開いた。
「あらぁ〜、風紀委員長さんの所の番犬ちゃんじゃなぁい。何でここにいるのかしらぁ〜?アタシ、特に悪い事とかしてないわよぉ〜」
真琴は風紀が様子を見に来たと思い、パソコンの電源を切った。
「こんな事までしてるの〜?偵察でしょ〜?風紀も大変ねぇ〜。でも、ざーんねん。あら探ししても何も出ないわよぉ〜」
そう言ってノートパソコンを片付け出した瞬間、千尋が口を開いた。
「1年C組、小林千尋。小鳥遊の入隊申し込みで来た」
その言葉に、真琴の顔が驚きに変わる。
千尋を見れば、大きな体で面接用のパイプに座り、待機しているではないか。
「え?…ちょっとぉ、……本気ぃ〜?どーゆーことぉ〜…?」
冗談言う子には見えなかったけど、それだけ柳を好いてるのはわかったので、真琴は仕方なくのってあげる事にした。
「はいはい〜、なぎちゃんの親衛隊になりたいのねぇ〜。でもねぇ〜、番犬ちゃんも知ってる通り〜、風紀は親衛隊には入れないのよぉ〜」
ブゥンとパソコンを立ち上げ、一応面接のセッティングをしてあげる。
「風紀は今さっき辞めて来た」
「ふぅ〜ん、そうなのぉ〜」
カタカタとパソコンを打っていた真琴が笑顔のまま固まる。
「………え?……ちょっと…今…」
「親衛隊とか初めてだからわからないが、体力と喧嘩だけには自信がある。よろしく頼む」
立ち上がって、90度にお辞儀する千尋に、真琴は口をあんぐりと開けた。
「ルールとか、教えて欲しい。俺は隠すのが苦手だ。だから言わせてもうが、小鳥遊を恋愛的な意味で好いている。出来れば触れたいし、抱きしめたい。更にはそれ以上の事を望んでいる。親衛隊に入った生徒に聞いたが、隊長、副隊長には性処理待遇、特攻隊長、司令隊長には小鳥遊からのそれなりのご褒美、他の平メンバーには食事会など交流の開催などがあると。」
大きな声と止める隙もなく話す内容に、思わず真琴は頭を抱えたくなった。
この堅物に親衛隊が存続する意味で大切な敬愛、更には表沙汰に出来ないよう配慮した下心の豪華特典付きを風紀の人間に教えたのは誰だよ、と。
「隊長、副隊長には織田と右京がいるのはわかった。ならば俺には特攻隊長としての任を命じて欲しい。小鳥遊の力になりたい、だがそれだけでは満足出来ない。恋人として側にいたいのが本音であるが、今の俺にはそんな資格はない。ならば、強制的でも構わない。小鳥遊に触れる権利が欲しい。俺以外の人間が触れないよう、隊長を目指さしてもらう。織田や右京から奪う覚悟でここへ来た」
いつもの照れた様子などなく、本気で柳が欲しくて堪らない、そんなギラついた瞳をしていた。
「ふぅ…、わかったわぁ〜。本気なのね?なぎちゃんの為に、風紀を辞めたって事かしら?……独占したい気持ちはわかるけどねぇ…アンタじゃ、げんちゃんはおろか、アタシにも敵わないわよ〜」
その言葉に、千尋は頷く。
はーっと大きな溜息をつき、こんな優良物件逃す手はないわね、と心の中で呟いた。
それにしてもライバル宣言と下克上宣言は素晴らしいものだと感心するのだった。
「番犬ちゃん程の実力なら、アンタにいわれるまでもなく、特攻隊長よ。それにしても風紀も何をしてるんだか…。って、風紀入りを断ったアタシが言えた義理じゃないわねぇ〜。じゃあ、明日からよろしくねぇ〜」
「ありがとう、恩に着る」
再び、深々とお辞儀したのだった。
玄心が帰って来て、千尋の姿を見て、おや?と言ったのは言うまでもない。
番犬ついに本物のご主人様を見つける。
2024.11.06
- 44 -
*前次#
ページ: