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「あぁ…小鳥遊くん…、こんな密室で貴方と2人っきりだなんて…。」
恐ろしい言葉に、柳の顔が強張る。
そうだ、確かに言われてみれば、自分の置かれてる状況を思い出した。
玄心に連れて来られて、あれよあれよと思うままベッドに降ろされ、閉鎖された空間にいるのは2人だけなのだ。
気づいてしまえば、何と危険な状況だろうか。
足にキスをするような変態だ。
これで終わりだなんて、そんな訳なかろうが。
「っ…胸が高鳴りますね。あぁ…愛おしい。何と可愛らしいのでしょうか…。食べてしまいたい…」
玄心ははぁはぁと息を荒げ、ペロっと舌を出し、自らの唇をゆっくりと舐めた。
その妖艶たるものといったら、誰もが卒倒してしまう程の色気を放っており、柳もそこには少しだけドキリと反応してしまったのだ。
だが、いかんせん。
食べてしまいたいとは、食人族の気でもあるのだろうか。
そっちのが命の危険だわと恐怖で固まる。
「僭越ながら、少しだけご褒美を頂いてもよろしいですか…?」
そう言って答える暇も与えず、玄心によりベッドに押し倒された。
「…!?」
あまりの素早さに思考が追いつかず、目の前にいる玄心と目を合わせてしまった。
それが良くなかったのだろう。
「お慕いしております…」
そう呟き、両手をベッドに縫い付けるように掴まれた。
「ひぃいい!!マジ、無理!俺おいしくねぇから!!人肉とか食べるの良くないって!!!」
柳はパニックに陥りながら、必死で手足をばたつかせる。
だが、玄心の体重と力強い腕により、びくともしなかった。
「ちょ、なぁ…っ?何か言えよ…っ」
柳は恐怖から、体が小刻みに震えた。
そして、玄心の顔がどんどん迫って来て、食われる、そう思った瞬間、唇にふにっとした柔らかな感触。
「ん…ん?」
目を開ければ、視界に広がる美しい青年の顔。
やっと柳は何をされてるか理解したのだ。
だが、既に遅かった。
「っ…ん」
唇を玄心により奪われ、何度もキスをされる。
触れるだけの口付け。
なのに、動きが何故か厭らしいのは気の所為だろうか。
玄心から聞こえる吐息混じりの声。
それが腰に響く。
「ん…」
「ぁ…」
角度を変えて、触れては離れて、玄心は幾度となく柳の唇に口づけを落とす。
歴代彼女にすら、こんな熱っぽく、色っぽいキスしてもらった事がない。
触れるだけのものなのに、まるで濃厚な口付けをされているような感覚に陥った。
ちゅっ、ちゅっとわざとだろうか。
音を立てて、唇を味わう行為が柳の羞恥心を呼ぶ。
それらも気づいて、わざとやっているように思えて仕方なかった。
35歳にもなって、自分が童貞のような反応をしてしまうのが居た堪れない。
ゆっくりと玄心の手が離れたかと思えば、腰に腕を回されたではないか。
体が密着し、より触れ合う体温。
それにとくりと微かに心臓が高鳴ったのは気の所為だと思おう。
そう柳は自分に言い聞かせた。
「は…」
呼吸を止めていた柳が空気を吸えば、それさえも許さないと、玄心により再び唇を塞がれる。
どのくらいそうしていただろうか。
頭の中が真っ白になり、体に全く力が入らなくなった頃、温かなぬくもりが消えた。
「んっ、…、ありがとうございました…」
玄心は頬を赤らめ、花が咲くように微笑んだ。
満足したのだろう、やっと唇が開放されたのだった。
一つ一つか、なんか厭らしいしかない。
最後に柳の首筋にちゅっと口付けをして、ゆっくりと玄心は離れたのだった。
(…これ、完全に流されたよな?)
2024.07.06
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