クレアとの●●の話2 「セックスレスですか」 クロエさんから話を聞いたリズさんは興味無さそうだった。いや、リズさんは基本的に無表情なので、実際興味の有無はよく分からないが。 「まあ、夫婦の間ではよくある問題ではないですか?」 「そりゃ、子供がいるとか熟年夫婦とかならまだ話は分かるわよ。でもこの子達はまだ結婚して半年も経ってないのよ!?ちょっとおかしいんじゃない!?」 おかしいかなぁ。 薄々感づいていたというか、そもそも初対面でプロポーズされてるから前提がおかしいのは分かっているんだけれど。 ていうか、声大きいなぁ。 因みに「この子」って私の事だよね。私多分クロエさんより年上だと思うんだけど。クロエさんって多分二十歳超えてないよね。私何歳だと思われてるんだろう。 私が一人悶々としていると風呂上がりに濡れた髪を揺らしながら話すクロエさんの肩をリズさんが掴んだ。 「おかしいと決めつけるのは良くないですよ。夫婦の関係なんて人それぞれですし、ましてそんなデリケートな部分は他人と比較してどうこう言うものではありません」 「……それは、そう、だけど」 リズさんの真っ当な正論にクロエさんが口ごもる。 ちょっと意外だった。リズさんがそんな事を言うとは思わなかった。 どちらかというと、「夫婦とはこうあるべき」という教科書的な像を押し付けられるのではないかと思っていた。 「なんですか?」 思わずまじまじとリズさんを見つめてしまっていたようで、リズさんが私の視線を問いただす。 「あ、いえ、ちょっと意外だっというか。リズさんがそういう話題に普通に話してるのが全然想像出来なくて」 「……そうですか。まあ、私も一応既婚者なので、夫婦の生活で悩んだことが無いわけではありませんから」 「「は?」」 私とクロエさんの素っ頓狂な声が綺麗に重なる。 「リズ!アンタ結婚してたの!?」 クロエさんが胸倉を掴むような勢いでリズさんに詰め寄る。 リズさんが既婚者だなんて初耳だった。 基本的に「レムレース」の人達の過去なんて率先的に聞くことはしていないが、なんとなくリズさんは独身者のイメージだったのだ。 しかし、この時代の女の結婚は強制力の強いものだ。 クロエさんよりリズさんは年上に見える。恐らく二十代半ばという年齢だろう。それなら結婚しているのが自然だ。 「してましたよ。とはいっても、旦那は数年前に死んでいますが」 「……あ、そうなの。……ごめん」 「貴方が謝る事ではないでしょう」 詰め寄っていたクロエさんが気まずそうにそっと視線を落とす。 「瑞樹さん」 「はい」 改まって名前を呼ばれて緊張する。 反射的に背筋が伸びた。 「旦那さんとの行為について、別に急ぐ必要は無いと思いますよ。特に貴方達は国際結婚になりますし、各々国での価値観の差もあるでしょう。結婚する前に行為を済ませるのが常識の国もあれば、結婚するまで処女を守るのが常識の国もあります。旦那さんが急いてくるというならまだしも、そうでないのならゆっくり進んでいければいいんです」 リズさんの優しい言葉に肩の力が抜ける。先程からの発言といい、意外だった。リズさんがこんなにも優しい言葉をかけてくれるなんて。 しかし、これで余計に言いづらくなった。 私の、本音が。 「アンタ、意外と優しい事が言えるのね。型にはまった模範生しか認めない堅物教師みたいな女かと思ってたわ」 「模範的であることは望ましいです。しかし、夫婦間においては当人の問題ですし、他人が口出す方が模範からかけ離れているでしょう」 「あ、あの」 クロエさんとリズさんの会話を勇気を出して遮る。 「……わ、私がしたい場合はどうすれば良いですか?」 「へ?」 「どういう意味ですか?」 リズさんとクロエさんが首を傾げる。 「ですから!私が、クレアと、その、進展したいというか、せ、セックスしたい場合はどうすればいいですか!?」 レヴィさんに「デリケートな話をするならもうちょっと小さい声の方が良いと思うよ」と言われるのは、また後日の話。 |