クレアとの●●の話4 家に帰って、クレアが用意してくれた夕食に舌鼓を打って、皿洗いは私がして、順番にシャワーを浴びる。 ベットに潜り込んでクレアと向き合う形で寝転がる。いつもの夜だ。 いやいやいやいや。 いつもの夜では困る。 恥を忍んで2人に相談した意味が無い。 『まずは、スキンシップを変えてみてはどうでしょうか。いつもより、多めに、大胆に』 リズさんの助言を思い出す。 スキンシップ?多めに?大胆に? クレアとのスキンシップと言って浮かぶのはハグとキス位だ。 家で2人っきりの時は基本的に身体の何処かしらは触れ合っている事も多い。 そこから多めに、大胆にと言われても、何をすればいいのか分からない。 こういう所で経験の浅さが出てしまうな。 多めに、というのは触れ合っている部分を増やせばいいのだろうか。いや、多めというのは回数の事かな?よく分かんないな。 大胆って?大胆なスキンシップって何だろう。うーん。これが元の時代ならスマホでちょっと調べてみたり出来るのに。 考え込んでいるとクレアにぐっと身体を引き寄せられて、ベッドの中で抱きしめられる形になる。 「考え事か?」 ちゅ、と額にキスをされる。 私が悶々としているのは筒抜けらしい。 それにしても、この男、息をするようにスキンシップしてくるな。悶々としてる私が馬鹿みたいじゃないか。 私からする事なんて手を繋いだりハグをするくらいしかない。 額とは言えキスを私からするのは恥ずかしくて出来ない。 ん?それならまずキスをするのが良いのでは? 私からするキスなら、いつもより大胆ではあるだろう。 「どうした?考えはまとまったか?」 ベッドの中でクレアを見上げるような形になる。クレアの頬を包んで、上体を伸ばす。そっとその額に口付けた。 ゆっくりと唇を離すと同時にクレアと目が合う。 顔に熱が集まるのが分かった。 冷静になったら負けだと思い、そのまま頬にもキスをした。 「今日はどうした?積極的だな」 「……い、嫌?」 「まさか」 クレアが嬉しそうにキスを返してくる。 何度か続けられる触れるだけのキスにくすぐったくて首を竦めると、その反応が気に入ったのかクレアはくすぐるように私の首筋をなぞる。 二人でくすくす笑いながら暫くじゃれ合っていると首筋をなぞっていたクレアの手が頭へ上ってきてぽんぽんと撫でられる。 「おやすみ」 そのまま頭を包み込まれて心地良い温もりに包まれながら微睡みに身を任せた。 「…………違う!!!!」 がばっと起き上がる。 違う! 何寝かし付けられているんだ! これでは結局いつもの夜じゃないか! 「どうした?」 クレアが驚いて起き上がる。 「くっ、クレア……!」 「ん?」 不思議そうな顔で首を傾げたクレアを目の前に、言葉に詰まる。 だって、なんて言えばいいんだ。 ――――――――せっ、せっくすしたいです……? 直接的過ぎるだろ。 ――――――――えっちしたいです? いや、そこの単語の問題じゃなくない? ――――――――抱いて? あ、その言い方良さげじゃない? 「あ、あの……!」 「うん。どうかしたのか?」 「だっ……!」 「だ?」 「…………………………………………なんでもない」 駄目だ。勇気が出ない。 そもそもこれ位で言えるようなら結婚前に済ませていただろう。 脱力して、起き上がっていた身体をベッドに倒す。 クレアも合わせるようにして横になった。 「考え事が好きだな瑞樹は」 ふっとクレアが笑ったのを見て、力が抜けた。 「それで?結局そのまま寝たんですか?」 翌朝、出勤して開店準備をしながら昨晩の顛末を話すと、リズさんの声が若干呆れている気がした。いや、ちょっと言い過ぎた。いつも通り淡々としている声だ。 「……はい。そのまま寝ました」 「……まぁ、無理してするものではないですから、長期戦で考えるのがいいんじゃないですか?」 リズさんからのフォローが投げやりになっているように聞こえるのは気にしすぎだろうか。 「そういえば、クロエさんは?」 |