またお逢いしましたね
写った姿がそっくりで

「お前何言ってんだ」


そう言って百之助が白石くんを侮蔑した目で見る。
えぇ〜〜〜と情けない声を出した彼はめげずに続ける。

「だぁって、名前ちゃんと尾形、もはや熟年夫婦みたいじゃぁん。ずっと気になってたけど、杉元もアシリパちゃんも何も聞かないしぃ」

「きしょくわりぃ声だすんじゃねぇよ白石」

「そうだぞ白石、きしょくわるい」

「えぇ〜〜〜」

「でも確かに、二人の関係って未だによく分かんないな」

「うんうん」

今日はどこも終業式なのもあって、平日にもかかわらず学生が多いファミレス。
アシリパさんが「パスタが食べたい!」と言い出し、白石くんが平日割引券を持ってるということで付いていくことにした。

式が終わり、いざ行かんとしていたところに、いつもの如く杉元くんがアシリパさんを迎えにきて彼も一緒に行くことになった。彼はアシリパさんのボディガードだ。アシリパさんかわいいもんね。
そして同じように私たちのクラスへやってきた百之助も暇だからと言い出し、結局いつものメンバーでファミレスへと行くことになった。


やいのやいのと騒いで、私と百之助が同じタイミングでりんごジュースを飲んだ時にふと、そういえばと問われたのが二人は付き合ってるのか、という言葉だった。

確かに、9才から一緒で同性の友達よりも長く時間を共にしていて、小中はまだしもわざわざ東京の高校を受験し、毎朝一緒に登校している私たちを"付き合ってる"と思うのも無理はないが、全くもってそのようなことはない。
しっかりと確認したことはないが、お互いそういった関係になることはないという意識がある気がする、多分。

だからいつも、お互い「ありえない」と答えているのだが、仕草が似ているとかいう理由で信じてもらえた試しがない。最近は訂正するのもめんどくさくなってきたので、話題をすり替える方向に落ち着いてきている。


「幼馴染みってだけでそんなに仕草が似るもん?尾形意識してんじゃないの?」

「よく言われるが、出会ったときから似てたな」

「ええ、まじかよ」

「小学生の頃は兄妹なのって言われることが多かったかな」

「あぁ〜〜〜兄妹分かるかも。ってかそっちの方がしっくりしてきた」

「兄妹なのか!?」

「勿論違うよ」

アシリパさんがそうだったのか!?とハンバーグを頬張りながら、驚きの声をあげた。パスタはいいの?

初めて出会った頃に感じた気持ちの楽さが疑問に思い、また、私たちの家庭環境を考えて兄妹もあり得るのではないかと私も思ったことがある。
母には聞けなかったので、こっそりと百之助のおばあちゃんに聞いたことがあるが、全くの赤の他人であった。顔は似ていないが、仕草や思考については他人の空似と言えた。




みんなと別れ、帰りの電車に二人揺られながら帰路につく。
片道二時間ほどの道のりは、特に会話をすることなく時間が経つ。
駅に着くとかなり日も傾き、橙色に空が染まっていた。歩き慣れた道を二人で進んでいく状況にふと、デジャブのようなものを感じた私は、そういえば、と最近気になっていることを隣を歩く百之助に語りかけた。

「最近さ、夢をみるんだよね」

「へえ」

どんな夢だ、と聞き返してくれた百之助に最近見た夢と、それに伴うデジャブの内容を話した。

「よく見るのはね、あんこう鍋を食べる夢。毎年百之助の家にお邪魔してるじゃん?その時みたいに、冬になるとあんこう鍋を食べてる夢を見るの。」

「・・・毎日食べてるのか?」

「うん、そう。よく分かったね。冬になると毎日。旬だからだと思うんだけどね。あとそれとね、ちゃんと百之助もいるの」

「ふうん。うなされる程あんこう鍋がいやなのか」

「別にうなされてはいないよ。あ、あとその夢、現代じゃないんだ」

「・・・・・・・・・時代が違う?」

「うん。なんか明治とか大正とかそんな感じ」

「夢なのに時代が分かるのか」

「だって、他にもそのくらいの時代だろうなっていう夢を見るの。現代の夢は見たことがないよ」

「そうなのか」

「そうなの。だからきっとね、自分の前世の事を夢で見てるんじゃないかなって勝手に思ってるの」


実は小さい頃からたまに見ていた夢なのだが、年があがるにつれてその頻度があがってきていた。夢にまで出て来る百之助はきっと、前世からのつながりがあるのではないかと思ってしまう程に。

「あと、今みたいに一緒に夕陽を眺めながら歩いたりとかする夢も見るんだよ」

「・・・・・・・・・」

「・・・変だと思ってるでしょ」

「・・・いや、思ってない」

「本当に?」

「ああ。だって俺も同じ夢をみるから」

なんということだろう。小学生のころにたまたま出会っただけの少年は、好みや所作が似ているだけではなく、幼い頃から唯自分だけが見ていると思っていた夢をも見ているだなんて。


「だから、俺は名前の言っていることを信じる」


彼なら、表情を変えることなく嘘をつくことも可能だろう。けれど、夢の中の自分とこれまで生きてきた自分はその言葉が嘘ではないと確信している。


彼とは色々なところで似ていると感じていたが、初めて信頼の言葉を明確にしてくれた百之助に愛おしさがこみあげる。
それはまるで、


「兄妹みたい」


思わず破顔し、こぼれ落ちた言葉が全身に染み渡り、幸福感を覚えた。




これまで見たこともないような優しげな顔で頷く隣人が、恋人とは違う大切な存在であると認識したのは、きっと必然だったのだろう。


「少しは気付いてくれただろう」