Sugimoto×Wolfman
※狼男要素の全くない杉元にいたずらする
「杉元ぉ・・・・・・以外とヘタレなんだなあ・・・・・・」
そんなことを言われてどうにも反論できないのが悔しい。
明日子さんとはたまたま、寝れない夜に徘徊していた時に出会った。深夜の公園で女の子とその子に覆い被さるおっさんが見えたので、何かあってはいけないと思って声を掛けたらヴァンパイアが”お食事中”だった。しかも食われてたのはおっさんの方。見られるとまずいところを見られたってことで、俺の記憶を消そう(物理)としてきたところで俺もまっとうな人ではないことを教えると静まってくれた。それ以来、人間に紛れて暮らす苦労を語り合う「異人種同盟」を組んで結構仲良くしてくれている。この前も上手いと評判のラーメン屋に行ってたらふく食べてきた。
あの日はかなり空腹だったらしく、普段なら同居している親戚の血を分けてもらっているようなのだが、我慢できずにナンパしてきたおっさんの血を貰ったらしい。けどやはり不味いと言っていたので、家に戻ってから口直しをしていると思う。
そんな訳で、今日は仲良くなったヴァンパイアの明日子さんのお家にお邪魔して、絶賛恋愛相談をしている。何歳も年下の子に相談するなんて不甲斐ない気もするが、年の近い子に聞いたほうがこういうことは上手くいくのではないかと思い、恥を忍んで相談したのである。
俺が恋を寄せる子は最近行きつけの喫茶店でアルバイトをしている苗字さん。控えめな性格に優しい眼差し。ただ静かな人かと思えば、結構フレンドリーに話しかけてくれてかわいらしい人だ。世間的に見れば少しぽっちゃりめの体系。女の子はこのくらいふっくらした方が抱き心地も・・・・・・。と妄想を繰り広げているのを察したのか、目の前に座る明日子さんの目つきが厳しいものになる。ごほん、と苦し紛れに咳をして再び恋愛相談をお願いする。
「好きな人の前だと上手くしゃべれないもんじゃない?」
「だとしてもだ!せっかく同じ空間にいて、他に客もいないっていうのに注文だけ!なんの為に店に行ったんだ?!」
「えええ〜〜〜ん。苗字さんをデートに誘うためですぅ・・・・・・」
「へたれ」
「うぐぅ」
はぁ、と溜息をついた明日子さんは空になったマグカップを片手にキッチンへと向かって行く。ことことお湯を沸かし、ココアを入れる明日子さん。戻ってくるまでに、何か決意表明というか、次の作戦というか、とにかく何かしら苗字さんに接触できるような作戦を考えておかないと。いや、作戦もなにも俺が勇気を出して声を掛ければいい話なんだけど。
喫茶店でしか見なかった彼女を、就活の為に企業から企業へ移動していた時、大学の休み時間であろう彼女がお菓子屋さんの併設カフェでくつろいでいたのを見かけたことがある。普段からほのぼのとした雰囲気の彼女が、頬を緩ませていかにも幸せです!と言わんばかりの笑顔でチョコレートケーキを頬張っていたのを見た俺はその笑顔に心を奪われた。あの笑顔を自分だけのものにしたいという願望が芽生えたのだ。
もっともっと、彼女のことを知りたい。あわよくばお付き合いを・・・・・・。と考えてはいるものの、明日子さんの言うとおり、肝心な時に緊張して声がかけられないのだ。ほんと不甲斐ない・・・・・・。しかもどうやら俺は緊張すると顔がこわばるらしく、まさに”狼”のようらしい。もしかして怖がられてるんじゃ・・・と一人ネガティブになってしまう。告白するとかの前に嫌われていたら暫く立ち直れない。好印象を与えつつ、爽やかに、人好きのする顔で、且つ自然に振る舞えるようにはどうしたらいいか・・・・・・・・・・・・。一人取り残されたテーブルで悶々とする。
「明日子さーん。俺どうしたらいいかなぁ?」
「えっと、・・・・・・・・・私はもっとお話したいです。」
「俺ももっとお話を・・・・・・・・・え?」
「どうも・・・。」
「ほぇ??!!」
なぜか目の前に苗字さんがいる。ここは喫茶店だっただろうかと辺りを見回すが、さっきと変わらず明日子さんの家だった。どういうことだ。いつの間に。全く気付かなかった。なんだなんだ。どういうこと?
「あ、れ、苗字、さん・・・・・・なんで・・・・・・ここに?明日子さんと知り合いだった、んですか・・・?」
「あの、ここは私の姉が借りてるお家なんです」
「あー、明日子さんの同居人が姉ってことは、明日子さんとも親戚・・・?」
「はい」
「なるほどぉ」
ハハハ、びっくりしましたよと誤魔化すが、声が震えている。全く以て動揺が隠せていない。突然の事に動揺して、どのように会話を続ければいいのか迷う。そういえば玄関が開くような音は聞こえなかったが、いつからこの部屋にいたのだろう。最初からいたのだろうか。まずいまずい。明日子さんはどこにいるんだ。さっきから全く気配が分からない。どうしよう。
下手なことを言っては引かれるかもしれないし、うまく言葉を繋げられる自信がない。いやでも、せっかくこんなに近いところに想い人がいるのだから、このチャンスを逃してはいけない。喫茶店と名前から明日子さんが自分の親戚に俺が恋をしていると分かってこの状況を作ってくれたに違いない。明日子さんの助力を無駄にするのも申し訳ない。いけ、いくんだ佐一!!!!漢を見せろ佐一!!!
ゴクリを唾を飲み、意を決して声を掛けようと口を開ける。
「あ」
「す、好きです!!!!!」
「の、・・・・・・・・・ええ???!!!」
「初めて、お店に来てくださった時から好きでした!」
「!!」
「ずっとお姉ちゃんと明日子ちゃんに相談してたんですけど、今日言ってしまわないと、杉元さん告白されてたからとられちゃうよって言われて・・・・・・」
「え、あ、いや、それは多分うそで・・・」
「だから、その、もしよければ・・・こんな太ってる私ですが、お付き合いしてください・・・!」
「・・・!!!は!!あ!!こ、こちらこそよろしくおねは、お、お願いします・・・!」
苗字さんから告白させてしまうなんて、やっぱり不甲斐ないことこの上ないが、まさか両思いだったとは・・・!!!彼女の申出に即答すると、うっすらと膜の張った瞳を細め、緊張のせいか紅潮した頬がふっくらと上に持ち上がると、これまで聞いたことのないような、あのケーキを食べている時にも聞くことのなかった、この上なく幸せそうな声で「嬉しい・・・!」だなんて言われてしまうと、今にも腕の中に閉じ込めたくなってしまう。
「名前さん・・・改めて、好きです。ずっと。」
そういって彼女を抱きしめようとしたところで、明日子さんが乱入し、「告白は許すが、私の可愛い名前にもう手をだそうだなんて、許さん!!」と部屋の隅に追いやられたのは流石に反抗してもよかったのではないかと思ったのは、1ヵ月後の初めて手を繋いだ記念日のことだった。
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