一つ目
「そう言えば私、みことあの黒白の馴れ初めを知らないことに気がついたの。」
「………あ、確かにそうだね…妖刀ちゃんに会った時には既に告白を受け入れてたし…」
「良かったら聞かせてくれない?面白そうだから。」
「えぇ…?!い、良いけど……」
「懐かしいな、出会った当初のそなた達はとてももどかしいものだった…」
「へぇ、風神様はその時のこと知ってるんだ?」
「あぁ、みこが初めて契約した相手が我だからな。ここに現れた時から、全て見守ってきた。」
「うぅ……目連様っ!」
「おやおや、顔が赤いな。茹でたこのようだ。」
「むむむ……っ……えっと…何から話そうか!」
「そうね………告白されるまでの二人を知りたいわ。」
「告白されるまで……?うーんとね……」


復讐を果たし、宮司様を未練なく転生の道へと送ることができた。
罰を受けた黒無常様の事が少し気掛かりだったけど、再び訪れる日を楽しみにしていた。
晴明殿での暮らしは時間がゆったりと流れ、落ち着きがありながらも決して退屈はしない。
ずっと昔から住み着いていたような感覚さえある。
晴明様の隣で陰陽術を学び、博雅様と共に弓術を磨く。
毎日様々な式神達と出会い、たくさんの価値観に触れることもできた。
ここにいる式神達は皆それぞれの信念を持ちながらも、決して独り善がりなことはしない。
きっと晴明様という主だからこそ、式神達にも良い影響を与えているのだろう。
私も……私もいつかは慕ってくれる式神達に囲まれ、お互いにいい影響を与え合う存在になりたいな…


「失礼します、こちらに巫女さまがいらっしゃると聞きまして、参りました。」
「…!そのお声は白無常様ですね!」
「はい、本日は黒無常もいますよ。入ってもよろしいでしょうか?」
「あ!えっと!ちょっと待っててください!」

巻物を前に筆が進まず、脱力していると無常様がやってきた。
慌てて出していたものを全て仕舞い、お礼の品を用意する。

「お待たせしました!どうぞ!」
「お久しぶりです、巫女さま。」
「……よっ!久しぶりだな、巫女さん。」
「黒無常様!あの後罰を受けたと聞きましたが、大丈夫でしたか…?」
「ははっ、大丈夫だ。気遣いありがとな。」
「いえ、私のせいで受けることになったのですから…」
「優しいな、あんたは。」

前に会った時はずっと怖い顔をしていたが、今日は気を緩ませているのか微笑んだ。
黒無常様も白無常様もお優しい方だということが、とても伝わってくる。
いい人達と巡り会えて嬉しく思う。
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