三つ目

「ふーん…つまり一目惚れじゃない。」
「そうだよね…やっぱりそうだよね!!」
「それで?その時何て返したの?」
「うん、まぁ少し待ってほしいって言ったんだけどね………」
「………」
「うん…………」
「押しが強くて我と犬神殿に助けを求めた事はよく覚えているぞ。」
「ええ……初めから我が強かったのね。」

あまりにも強すぎて半分押しつぶされそうに、押し倒されそうになっていた。
恥ずかしさが爆発して、叫び声をあげてしまったことは、今思い出しても後悔している。

「でも結局は告白を聞き入れたってことでしょ?」
「うん、そうだよ。」
「みこはどんな感じだったのか気になるわっ。」


派手に白旗を挙げた私は、ひとまず無常様を部屋に置き、移動する。
私、そんなに気に入られる事なんてしてたかな?!
あの時は復讐に精一杯で、あまり無常様の事を気にかけたりなんてしなかった。
ただ、仕事とは言え罰を受ける黒無常様に申し訳ない気持ちと、無念を晴らせた気持ちと…
特別な振る舞いはしなかったはず……

「ぁ……晴明様……」
「ん?無常兄弟が禰宜様を訪ねて行ったと思ったのだが…」
「あの…晴明様……無常様のことはよくお知りですか?」
「そうだな…それなりには知っていると思う。どうした?」
「あの…その………無常様に告白を…されまして……」
「……………………………そ、そうか…」

晴明様も意外だったのか、私の顔を凝視されていた。
じゃあ言い慣れている訳ではないのかな?
…つまり、本心、本心?!

「わ、私!無常様と会って三回目ですよね?!何で!どうして!」
「とりあえず落ち着くんだ。理由は聞いたか?」
「えっと……宮司様への態度と優しさらしいです…」
「ふむ、なるほどな……なるほど…理解出来なくもないぞ。」
「え…?」
「あの二人の事を少し話そう。そうすれば少しは納得がいくだろうからな。」

鬼使いである無常様。
鬼使いの仕事と言うのは、亡霊の未練を聞き転生へと導くこと。
亡霊は己のためだけの欲望を吐き出し、自己満足することを求める。
だからこそ、互いを思い、気遣う姿勢も見せる私達は、少し変わって見えたのかもしれない。

「でも、そんなのっておかしいですよ…周りの人も皆そんな感じでしょうに…」
「あの二人は普段から亡霊としか接していないし、生者にはあまり興味がないらしいんだ。」
「……」
「黒無常に至っては弟である白無常のことを一番に考えているからな…そんな彼が………面白いじゃないか。」
「…!晴明様?」
「はは、すまない。まぁそうだな、あとは禰宜様の気持ち次第だろう。彼らも生半可な気持ちではないはずだ。」
「………分かりました…今日はとりあえず存分にもてなすとします。」
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