四つ目
胸を騒がせながらも部屋へと戻る。
戻ってきた私を見るなり、無常様がぱっと明るい表情になった。
告白のことはまた後日、落ち着いて考えたい、と伝えた。

「そう…ですか……では、またこの思いを伝えに参ります。」
「えっ…?!」
「当然でしょう?男が好いた女性の下へと通うことは、何も特別な話ではないでしょう?」
「明確な答えを聞ける日まで、俺は通うつもりだ。」
「えっと………」

困った…
毎日あんな事されてしまうだなんて…
私に拒否権が無いのも同然…!!
……そうだ!
読んだ中の書物では、こういう時に献上品を要求してたっけ!
…でも、欲しいものは特にないけど……
あ…!

「無常様、少し良いですか?」
「何でしょう?」
「えっと…その…私を想う気持ちは嬉しいのですが、一つ要求したいことがありまして…」
「何だ!お願いか?いいぞ、何でも言え。」
「その……私を想う気持ちを伝える物を貰いたいのです。」
「……心そのものの具現化、ですか…」
「……いいぜ、持ってきてやるよ。」
「では、今度お見えになる際にお願いしますね…納得できない時はお断りします…から…」

断る、そんな場合を考えると、胸が苦しくなる。
好意を退けるなんて、そんなこと……
でも、もし遊ばれているのなら、断って正解だ。
全ては無常様の気持ちを確かめるため。
正直まだ無常様の事が、好きだとか一緒にいたいだとかは思えないけど…
それはいずれ過ごすうちに感じることだろう。
この答えはそれなりに悩むはずだから、落ち着いて考える時間もできるはず。
二刻程、無常様は寛いでいきその間ゆったりと身の上話などをした。
日も暮れかけた頃、仕事へと戻るお二人を見送りに出る。

「今日はありがとうございました…とても良い時間でしたよ。」
「それは良かったです…!」
「ありがとな、じゃっ!また明日楽しみにしててくれ!」
「へ…」
「では、失礼します。」

待って…?また明日…?
や、やっぱり遊ばれているのかもしれない…!
う…でも…考える時間はあったことにはあったけど…
あまりにも早すぎる…!!
……判断材料を指定してしまった以上、私もちゃんと向き合わないといけないよね…
明日……いつ来るのだろう…
楽しみより不安…何と返事すれば良いのかが分からない…
晴明様にもう一度相談しようかな……八百比丘尼さんにも聞いてみたい。
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