当たり前のこと
まさか私が手本になる番がこんなにも早く訪れるとは思わなかった。
だけど、教わった事は抜け目なく伝えられていると思いたい…
日が暮れる前に今日の作業を終わりにする。
食材だけ分けてもらったのを、持ち帰って小屋で料理。
一人分を作るのは久しぶりだなぁ。
黒無常が胡座をかいて、じっと私を見つめている。
視線が痛い……そんなに見る所ないと思うのだけど…
味噌煮が煮詰まったのを見て、火を消して器に盛る。
我ながら上手に出来たと思う!
先に炊きあげた雑穀米も盛って、食卓へと運ぶ。
頂きます、と手を合わせて食べようとすれば、黒無常が間隣に座ってきた。
と、思えばくんくんと臭いを嗅がれる。

「な、何…?」
「ふーん……やっぱりあいつ近づいたんだな。」
「あいつって?」
「ん?昨日言っただろ?お前の事を気に入ってる奴がいるって。」
「…………お昼に一人、男の人とお話したけど、全然そんな感じしなかったよ?」
「そりゃそうだろ、男も一応嫌われない努力はするんだよ。」
「そっかぁ……あ、今回はご飯一人分しか作れないけど、許してね?」
「飯…?みこが俺の飯になるんだろ。」
「っ!?!?」
「……あぁ、でもそれ一口くれないか?」
「これ?じゃあお芋一個あげる、はい。」
「もっと可愛くおすそ分けしろよー。」
「う……黒無常…ほ、ほら………ぁ…あーーん………」
「んぁー…………ん、なんかちょっと甘いな。」
「砂糖は入れてないよ?このお味噌が甘めなんじゃないかなぁ。」
「明日は何するんだ?」
「えーと…奉納する物の選別と、宮司さんに芸を教え込む!」
「ふーん…舞を見せるってことなら、労らねぇとなぁ。」
「どういう意味?」
「抱くつもりしかなかったけど、今日は奉仕で妥協するしかないなって。」
「も、もう……」

のんびりとご飯を食べ終え、器を洗っている間に抱きしめられて動き辛い。
やっぱりお話するだけでも、やきもち妬いてるのかな。
すりすりと太腿を撫でられる。
何で…さっきまで手甲つけてたはずなのに、外してるの…?
少しひんやりとした素肌で、肌を撫でられる。
こんな事されたら、どきどきして……流されちゃうよ…

「もちろん、してくれるよな?」
「な、何を…っ。」
「奉仕に決まってるだろ?ん?」
「し、しない……」
「ふーん?それは俺よりあの男の方が良かったって事か?」
「…?!何でそんな事を言うの…?」
「じゃあみこは誰の者なんだ?ん?その身体で証明しろよ。」
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