焦がれる
運命の人と出会ってから私は毎日都へ通った。
そうしたらまた会えるのではないか、と淡い期待を抱いて。
しかし、なかなか会えないものね。
都も広い…私はいつも下の方しか歩いていない。
もしかしたら、もっと繁華街へ行かないと会えないのかもしれない。
残念ながら私のお気に入りの店には、彼が来たことはなかった。
彼は一体どんな店に立ち寄るのかしら…
見た目からして…呉服店、それも良い生地を扱う店…?
飲食もこんな路地裏にある平凡な店には入らないわね…
全ては彼ともう一度会って、話をするため!
明日からはもう少し遠出をしましょう。


「禰宜様?少し聞いても良いかしら?」
「ん?どうしたの、三尾?」
「昨日ねぇ、街を歩いていたら、多分白無常さんの事を聞き回っている人がいたの。」
「…?白無常のことを…?」
「何か心当たりはないかと思って…」
「…………少し前に確か泥棒を捕まえたんだよね。もしかしたらその時の人かも。」
「あらぁ、泥棒が?なるほどねぇ、彼の事だから謝礼を断ったのでしょうねぇ。」
「そうだと思うよ、手ぶらで帰ってきてたし。」
「案内した方が良いかしら…?」
「そうだね、少し位は本人の気持ちを汲み取ってあげないと。」
「じゃあ明日、またいたら声をかけてみるわねぇ。ここに連れて来れば良いかしら?」
「うん、ちょうど明日にまた帰ってくるみたいだし。」
「ふふ、白無常さんも悪いお人よねぇ。」
「うーん…白無常は冥界のお仕事が本業だし…それにこれからも教えてあげれば良いからね!」

そっかぁ……あの時の災難に遭った人が、白無常を探し続けてたんだ…
でも三尾の言い方では、名前すら知らない感じだよね…
だとしたら、地方から来てる人なのかな?
なら、尚更会わせてあげないと可哀想。
白無常は気が進まないかもしれないけれど、私は関係ないから裏で待っておこうかな。
あくまでも主役は白無常!
たまに蔑ろにする言葉を放ったりするから、そこだけは気をつけてもらわないと…
白無常はそんな自覚がないみたいだけど、本心そのまま言う事が駄目な時だってあるのに!
例えば、私の事を最優先して考えていることを口に出したり!
一度きりの出会いはどうでも良い、なんて言ったりするのは絶対に駄目!
そりゃあ妖怪だし、輪廻転生してしまえば、全て忘れてしまうのかもしれない。
けれど、相手は死ぬまで覚えてるんだから…
それに関わる人間だって、私だけとはいかないんだから…
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