計らい
都の中心部へ向かう為にも、今日は張り切って作業を終わらせてきた。
すっかりと通い慣れた都。
よし、今日こそは彼の情報を少しでも…

「あぁ、今日もいらして良かったわぁ。ねぇ、貴女ちょっと良いかしら?」
「はい?私ですか?」
「そうよ、ここ最近毎日来ては、人を尋ねているのよね?」
「も、もしや…白く長い髪を持った検非違使のような男性をご存知なのですか!?」
「ふふ、えぇ。私も貴女を探していたの。私は彼の居所を知っているわ、案内しましょうか?」
「ぜ、ぜひ!!」

都に着いて突然声をかけられたと思えば、落ち着いた雰囲気の女性だった。
茶色の髪を結い、色気を感じる黒い着物を纏った女性…
彼の知り合いと言うには、十分に信用出来る様相ね。
さっそく案内に乗っかる。

「そうそう、貴女は彼にどう言ったご用件で探していたの?」
「あぁ、はい…実は先日引ったくりに遭いまして…それを助けていただいたんです。」
「なるほど…それは災難だったわねぇ。その時に、彼の名前は聞かなかったの?」
「えぇ…お礼がしたい事は言ったのですが、それを断ってすぐに帰ってしまわれて…」
(あぁ、やっぱり…あまり長く禰宜様を一人にさせたくなかったのね。)
「そうだったのね。ちなみに今日はお礼の用意はしてありますの?」
「いいえ!今日も一日使って捜そうと思っていましたので。」
「ふふふ、じゃあ今日はしっかりと道を覚えて、一人で来れるようにしましょうね。」

この女性は彼から見て、どう言った関係の人なのかしら…?
お世話係とか…秘書とか…
少なくとも妻や身内の者ではなさそうだわ。

あれから随分と歩いてきた。
案内されて来た場所は何と、安倍晴明の屋敷。
まさか、彼は陰陽師だったの…!?
立派な門を潜った脇で待つ様に指示される。
陰陽師ね…それならばあの姿にも納得できる。
安倍晴明を筆頭に一部の名があまりにも強すぎるから、彼の名前は聞いたことがないものかもしれない。
だけど、陰陽師であるだけ凄い人である事に間違いないわ!
あぁ、さらに緊張してきた!


「本当に行かねばならないのですか…」
「会ってあげて!何なら一緒にご飯でも食べに行って!」
「みこ以外には、至極興味がないと言っているのに…」
「興味がある、ないじゃなくて…とりあえず望みを聞いてあげて!」
「みこは僕に浮気をしろと命じるのですね…」
「そんな事言ってないー!」
「白無常さん、今日は予定だけの話になりそうだから、ね?」
「ほらほら、早く!」
「…………はぁ……………」
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