心の内
はぁ…どうして僕が鬼使いである事を、隠さねばならないのだろう。
本当にみこは鈍感すぎて困った。
この女性は明らかに僕へ好意を寄せている。
だからこそ、執念深く探し回っていたというのに。
この人なりに相応しい場所を考えたのだろうが、見当違いにも程がある。
こんな料亭に連れてきて、自分だって来たことがないのが手に取るように分かる。
ない見栄を存分に張られて、更に気分が悪くなる。
あぁ、早く帰りたい。
一つ良かった事と言えば、この店を知れた事だろうか。
今度来る時は、最高級なこの部屋ではなく一般席で、みこへのご褒美として。
僕の仕事は何なのか、普段は何をしているだとか。
自分の身の上話もありがたい事に長々としてくれた。
僕は何も考えずに、時間が流れるのを待てば良いだけなのは、楽で良い。
適当な答えを返して、ようやく利用時間終了の知らせ。
この地獄よりも辛い密室から解放される!

「どうでしたでしょうか…?お口には合いました?」
「えぇ、悪くはなかったですよ。お気遣いありがとうございます。」
「良かったわ、そしたらお屋敷の方へ戻りましょうか。」
「おや、まだもう少し時間があるようですが…」
「えぇ、はい。これは個人的なお話なのですが、屋敷の方を見て回りたいと思いましてね。」
「晴明殿をですか…滅多にない機会でしょうから、良いと思いますよ。」


「あれ?白無…っ!……もう帰ってきたの?」
「ただいま戻りました、と言いたいですが…ここの案内をしなければ。」
「あ、こんにちは。ここの方ですか?」
「は、はいっ。晴明様の下で修行中なんです!」
みこ…巫女さま…せっかく集めた木の葉が風で散ってますよ。もう少し頑張って。」
「えへへ…恥ずかしい所を見られちゃった…」
「クスクス…風が止むと良いですね。」

へぇ…安倍晴明に弟子がいたなんて。
それにしてもこの少女とどういった関係なのかしら?
今一瞬、彼女の名前らしき物が彼の口から漏れたような…
まぁ陰陽師同士なら名前で呼びあっても、不思議ではないわね。
白さんの丁寧な案内と共に晴明殿を一通り見学する。
ここが未来の住居地と言っても、過言ではないわね!
最初から最後まで彼はとても美しかったわ。
表情の変化が少ない所なんて、あまりにも素敵すぎるわ。
普段は物静かなのね…
やはり気品溢れる方だったわ…
是非とも私の旦那様に…いえ、旦那様になってもらうわ!
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