優越
「うむ…兄弟共々、契約することになったんだな。」
「はい…おこがましく思いますけど、無常様が喜ばれるので…」
「はは、そうか。あの二人はああ見えて、人と話すのが好きみたいだからな。」
「そうなんですね…」
「普段亡者ばかり相手していれば、いい反応を返す相手が好きになるのも分からなくはない。」
「………」

一気に二人と契約するとなると、それなりの体力が必要になる。
契りを結ぶということは、相手の名を縛るだけでなく、私の霊力を分かち合うことにもなる。
今度はいつ来るか分からないけれど、それまでに霊力を高めていれば問題ない。
今日からはずっとその修行だ。
霊力を高めるのは凄く疲れて、熱っぽくなる。
でも高まる感じや終わった後の名残は、不思議な感覚がする。
静かな部屋で瞑想する時間は、無になったまま時が過ぎる。
あっという間に感じたり、長いなと思ったり。

一目連様と犬神さんは既に晴明様の式神となっていた。
それを私が引き継ぐ形で契約したから、修行を始めてから浅くても大丈夫だった。
でも、無常様はそうじゃない。
晴明様は元々、二人を式神にしようと考えていたみたいだけど、私が来たことによって考えを変えたらしい。
どうせなら、繋がりの強い方と結ぶ方が良いだろう、と。
私と無常様は、宮司様の願いでもあった『幸せを見届け、傍で危機から守る』約束がある。
今はもう宮司様の願い関係なく、無常様自身がそう思っているみたいだ。
ずっと気にかけてくださる二人に、私も恩返しを沢山しなければいけない。
そんな関係の私達の方が、晴明様よりずっと深い縁になっている。
契約する際はお互いの気持ちも重要であり、相手の自分に対する信頼度によっても難易度が大きく変わるらしい。
その点、無常様から見る私は、むしろ契約したいという思いのために、断然楽になるだろうと言われた。
それでも、霊力を供給できる程の器にはならないといけない。
いざと言う時は、自分の霊力で相手の妖力の代わりを賄わねばならない。

「晴明様…」
「ん、どうした?」
「私に…二人の主という立場が務まるでしょうか…」
「始めは不安に思うかもしれないが、契約を結ぶ内に水準も高くなる。」
「……」
「衰弱しない限り高まった限度が落ちることは無い。そしてまた霊力を高め、水準も高まり…と。だから安心すると良い。」
「……もっと頼れる陰陽師になれるよう、頑張りますっ。」
「うむ、いい表情だ。」
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