その前に
数日して約束通り、黒無常様と白無常様が一緒に私の元へと訪れた。
挨拶を交わして、晴明様を呼びに行く。
あぁ、これから本当に無常様と契約を結ぶんだ…!
緊張で心臓がうるさく鳴る。
晴明様を呼んで戻れば、無常様は嬉しそうな顔を見せる。

「俺達も巫女さんの式神として力になれるんだな…!」
「あぁ、そうだ。存分にその死神の鎌と死者を操る力を奮うこともできるぞ。」
「力を強める事もできると…?」
「うむ、禰宜さまの霊力をお前達が取り込めば、その分また妖力として力が増大するんだ。」
「霊力を取り込むのって……俺は肉を食らう方法しか知らねぇんだが…」
「そうだな…例えば傍にいて、力を感じ取るだけでも取り込めるらしいぞ。私の場合がそうだ。」
「晴明様はお強いからですよぅ…私はまだまだ見習いだから…」
「禰宜さまにはまだ少し早いかもしれんな。後は契約主と触れ合ったりする事だろうか。」
「なるほどな……血肉以外にも方法があったんだな。」
「ははは!全てがそうだったら今頃、陰陽師という存在はないだろうさ。」
「一つ為になることを聞けました。」
「さっ、私とはこれ位で、あとは禰宜さまの番だぞ。」

指名されて緊張は最高潮を迎える。
大丈夫、さっき晴明様が自信を持って良いって言ってくれたもの。
晴明様が大丈夫って言ったら、失敗する心配なんてしなくても…!
ぎゅっと握る手に力が入る。
無常様が私を見ている。
とても硬直しているに違いない。

「巫女さん?大丈夫か?俺は何をしたら良いんだ?」
「ゆっくりで大丈夫ですからね。」
「は、はいっ!え、えっと…手を出してほしいです…」
「手か?手甲は外した方がいいか?」
「で、できれば…その方が確認しやすいので…」
「二人にはまだ言っていなかったな。契約すれば、式神となる身にはその主の紋様が刻まれる。」
「晴明殿であれば五芒星が、手に刻まれるということですか?」
「そうだ、彼女は私の弟子だからな。不完全な五芒星が手に浮かぶはずだ。」
「では、先に契約した一目連様と犬神様にもその模様が刻まれているので?」
「あぁ、一目連は足の指辺りに、犬神は手の指辺りに出ているぞ。あまり気づかない場所だから、見たことがないだろう?」
「そういえば、どうして人によって場所が違うんですか?」
「それは…禰宜さまの彼らに対する気持ちの現れだからだ。体の位置によって意味は異なる。ただ、その意味は今ここで教えるのはやめておこう。」
「えっ!」
「ちゃんと契約できたら、ご褒美として教えてやるぞ。」
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