名を刻んで
ごくりと唾を飲み込んでしまった。
気になるに決まってる!
最初は二人とも手の甲だったのが、いつの間にか場所が変わっていた。
それは私が二人に対する気持ちの変化に合わせて、変わっていたとしたら…
よし、頑張る!
頑張って無常様との契約を交わしてみせる!

「で、では黒無常様…良いですか?」
「俺はいつでも構わん。」
「……スゥ………フゥ………」

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
目の前に差し出された手を両手で包み込む。
そして、契約の呪文を唱える。
言霊が黒無常様へと、手から妖力が流れ込んでくる。
冥府の力も混ざった妖力は、とても心地のいい物とは言えない。
最後まで呪文を唱えてしまい、黒無常様が応える。
力の流れが落ち着いたのを感じて、手を離してみる。

「………おぉ、これが巫女さんの…」
「どうやら、上手くいったようだな。」
「はぁ……っ……はぁ………」
「だ、大丈夫か?なんか思ってたより疲れてるみたいだが!?」
「だい…じょうぶです…っ…でも…ちょっと……やすみたい…」
「あぁ、無理はしなくて良いからな。もう少し落ち着いたら白無常とも結ぼう。」
「はい…っ。」

手の甲に力強いとは言えないが、しっかりと模様が浮かんでいるのが見えた。
黒無常様は模様が入った手の甲を眺めては、撫でたりしている。
お互いの信頼が強い程、無常様に刻まれた模様は強く浮かぶ。
それから特別な絆が生まれれば、私にも相手の模様が浮かぶようになるらしい。
特別な絆かぁ…
お二人とはそういう関係になるのだろうか…

「さっきの話だけど、俺もその意味が知りたい。」
「うん?まぁ、あの二人への気持ちなら言っても支障はないだろうな。」
「とっても気になります…」
「あぁ、この意味は何も契約に関しての物ではなく…密かなる思いの現れと同じなんだ。」
「密かなる思い…」
「これを言ってしまえば、もう調べる事も出来てしまうな。体の部位毎に意味も異なり、様々な場所があるから調べてみるのも面白いと思うぞ。」
「俺達のも変わる可能性が十分にあるってことだよな?」
「そうだな、まぁこれ以上は禰宜さまが可哀想だ。」
「そうですよぅ!こんなの公開処刑ですっ。」

熱くなった体も落ち着き、混ざりあった力にも慣れてきた。
それから少しして白無常様とも無事契約を結んだ。
これからお二人は私の手となり足となる…
私の方が微力かもしれないけれど、力を貸す方だと思うなぁ…
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