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やっと巫女さんの式神になれてとても嬉しい。
やっと巫女さまに従けて幸せだ。
巫女さんも俺のことが好きだよな?
巫女さまも僕に興味をお持ちでしょう?

そうでなければ、契約を結ぶはずがないだろう?

私の一目連様と犬神さんに対する思いが、崇拝心と感謝。
確かに一目連様は風神様として、私にとっては立派な神様だと思っている。
犬神さんもずっとまるで親のように可愛がって、心配してくれて…
そんな犬神さんに安らぎを感じている。
確かに合っている。
でも無常様に対してはまだ、そんなに深い気持ちは持っていない。
契約も結んだところだから、これからってところだろうけど。
お二人はお忙しいから…なかなか会えないかもしれないけど…
そういえば契約を結んだ時に、私の名前を聞いた時の顔はとても嬉しそうだったな。
やっぱり妖怪にとって名前って、とても重要な物なのかな。
呪で互いを縛りつける関係。
少し怖いかも。
でも、手を取り合って困難に立ち向かう晴明様のお姿はいつも素晴らしい。
私もいつかはあんな風に…!

「契約を結んで間もないですし、近頃は落ち着いているので手伝いに来ましたよ。」
「…!いらっしゃいませ、黒無常様、白無常様!」
「みこの所に『帰ってきた』感覚だから、そこはおかえりが良いな…」
「では、おかえりなさいませ!」
「ありがとうございますっ。さて、僕達に何か出来る事はありますか?」
「うーん………私でも出来る依頼があるか聞いてみますね!」

小走りで去っていく背中を見送る。

「うわぁ…名前で呼べるって最高かもしれねぇ…」
「さっそく呼びましたね?巫女さまも普通に聞いてましたが。」
「お前もその巫女さま呼びやめて、みこって呼ぼうぜ。」
「巫女さま……、…みこ………」
「うん、新鮮でいいな。お前いつも敬語だからさ。」
「かと言って…あちらもまだ様付ですよ。」
「やめさせれば良いんだよ。」

「無常様、お待たせしました!近くで天邪鬼が悪さをしているらしいので、それを鎮圧しに行きましょう!」
「おぉ、みこの陰陽師発足依頼か?」
「そう…ですね……一人で行くのは初めてです!いつも晴明様と一緒でしたから。」
「おめでたいですね、そんな良き日に巡り会えて嬉しいですよ。」
「頑張ります!退治するのは無常様だけど!」
「あぁ、みこは案内だけすれば大丈夫だ。」
「……あ、あの…黒無常様…名前呼びはなんだか恥ずかしいですっ。」
「…!」
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