空白
お互いに時間がある事が分かり、日当たりのいい場所へと向かった。
木陰ができて、ちょうどいい芝生が生えた場所に腰掛ける。
今日も日差しが暖かくて気持ちいい。

「みこの陰陽師としての初仕事の手伝いができて、嬉しいぞ。」
「それも式神として、ね。 」
「私も、無常様と向かえたからか、あまり緊張もしませんでした!本当にありがとうございます。」
「晴明が見込んだだけあるよなぁ。立派な陰陽師になる日もそう遠くない気がする。」
「そ、そんな…それは褒めすぎですっ。」
「誇っていいのですよ。無名の者よりは、はるかに仕事ができていますから。」
「…、…」

べた褒めするお二人に、顔が熱くなる。
本当に褒めすぎだと思う…
まだまだこれからが大変だろうけど…
応援してくれる人がいると、頑張れそう。


名前を呼んだだけで、あんなに顔を赤くして…可愛かったなぁ。
晴明殿からも全幅の信頼を得ている僕達と、契約を結べて本当に良かったと思いませんか?
今日、みこが陰陽師としての一歩を踏み出したのと同時に、俺達との絆も一歩進んだのを感じたよな?
そして僕達は、貴女にとってかけがえのない存在になるんですよ。

離すことなんて絶対にできない。
そして離れることも。
それなのに………

少しの間、亡霊の面倒に追われ、冥界送りの数が増えてしまった。
それぞれ長引かないように、東奔西走しもう一度顔を見せられた時には二月経っていた。
だが、せっかく来たにも関わらず屋敷は留守。
どこに行ったか知っていそうな奴に聞けば、最近都での交流会に参加していると聞いた。
交流会…それも都の人間と…?
何の意味があるのだろうか。
開催場所を聞き出し、さっそく彼女の姿を探す。
そうしてやっと見つけた後ろ姿と同時に、隣には平凡な男。
それも親しげに話して、笑っている。
人に対して臆病な彼女があんなにも楽しげに……

「なぁ、みこってちょっと人見知りなところあるんだっけなぁ。」
「その様に思いますけどね。」
「あいつとは、どうも初めましてではない様に見えるなぁ。」
「奇遇ですね、たった二ヶ月…二ヶ月もの間の方が正しいでしょうか。その間に…」
「俺達、みこに随分と忠義を見せたはずなんだがなぁ。満更でもなさそうだったじゃないか。」
「契約を交わした時点で、もう特別でしょう?満足されたんですかね?」
「あいつ如きがみこの何を知っている?俺達の方がよき理解者なのに。」
「酷く裏切られた気分だ。少し顔を見せれなかっただけで…」
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