これからは
「そなたのことをどこかで見かけたような気がするのだ。」
「…?」
「そなたはここの生まれなのか?」
「実は…宮司様と出会う以前の記憶が全くないんです。」

宮司様と出会ったのも倒れていた私を小屋で介抱していただいて…
記憶のない私を何も言わずに弟子として育ててくださった。
宮司様と過ごした時間はかけがえのないもので、私の全てで…
自分自身でも記憶がないことに疑問を持つばかりだけど、自然とそのことも忘れていたな…

「その…一目連様は私に似た誰かを見たのでは…?」
「ふむ、そうかもしれないな。我の勘違いかもしれない。」

しかし…今も感じるこの力は確かにあの子の力と同じ…
もし、あの後こうして人間として降りたのであれば…そうであってほしい。
縁結神と大層仲が良く、時折氏子達と直接触れ合いに行ったり…
とても無邪気で疑うことを知らない子。
彼女自身は全く気づいておらぬようだが、その神力は未だ衰えてはいない。
今は陰陽師になるべく、晴明の元で修行をしていると聞いた。
ならば、我はそなたの力になろう。
傍に着き、護りたい。
いつか慕ってくれたあの時のように、今度は我がそなたを支えよう。

「我をそなたの式神にしてはくれないか。」
「え…?で、でも晴明様の式神なのでは…?」
「名をそなたに預けたいのだ。そなたの力になりたい。」
「一目連様…ありがとう……ございます…」

力強く見つめられ、その思いは揺るがないことを知る。
そうなれば私が拒む理由はない。
一目連様と契りを結ぶ。

「私は陰陽師、みこ。」
「我は一目連なり。」
「一目連、私の式神となり力になりたまえ!急急如律令!」
「そなたの名はみこと言うのだな…美しい名だ…」

一目連様の手の甲に不完全な五芒星が浮かぶ。

「風の力でそなたを守ると誓おう。」
「頼りにしていますっ。」
「そなたの式神は誰がいるのだ?」
「犬神さんだけです、一目連様が二人目。お言葉とても嬉しかったです。」
「そうか…うむ、我もそなたに仕えることができて光栄に思う。」
「もっと式神さんがいれば、やっぱり賑やかで楽しいだろうなぁ…」
「鬼使いと結ぶのはどうだ?」
「へっ?え…あのお二人は御恩がありますし…式神だなんて…恐れ多いです…」
「そうか?案外喜ぶやもしれんぞ。」
「うぅん…」
「妖に取って名はとても大切でな。そなたは特に名を隠しているのであろう?」
「晴明様が言ってはいけないと。」
「うむ、なおさらだ。我もそなたの名を聞けてとても充足感を感じている。名を預けられる幸福感と共に。」
「妖怪にとって名前ってとても意義のあるものなんですね…」
「言霊があるであろう?その中で名というものは緊縛力が強いのだ。それだけ因果が強いのだ。」
「一目連様のお話…とても勉強になります。」

何となくでしか知らなかった意味。
まだまだ見習いである私が名を出してはいけないのも納得がいく。
一目連様は何故、無常さまと結べば彼らが喜ぶと言えるのか分からない。
だけど、少し話をしてみてもいいかもしれない。
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