冥界へ入るためには一度仮死状態にならなければいけないらしい。
死ぬ事のできない八百比丘尼さんを置いて、黒無常様と白無常様の後をついていく。

不思議だ、冥界なんて死なない限り来ることのできない場所。
なのに今、ここにいる。
心の底が冷えるようなずっと暗い道を歩いていく。
近くでガシャンガシャンと何かを漁る音が聞こえてきた。
その音へと近づくと、青白い人が何かしていた。

「いたいた…まーたお前迷い込みやがって。」
「んお?あー!あの時の鬼使いさん方!もしやここは冥界?」
「えぇ、あなたまた迷い込んでますよ。」
「これはすみません!気になるものを見つけたので…」
「気になるもの?」

握られた手にはたくさんの白い石。
道標のように続いていたのを拾っていたら迷い込んだらしい。

「……これは猛婆が置いたものですね。」
「ったく…そんなもん辿ったって意味ねぇぞ。」
「お知り合いの方の物でしたか〜!あはは、綺麗な物は集めたくなってしまうんですよ。」
「気持ちは分からんでもないが…まぁとにかく帰るぞ。」

あっさりと解決。
でも冥界は居心地の悪い場所だから、長く歩かなくていいのはありがたい。
ほっとしていると白無常様に声をかけられた。
私と話がしたいとのこと。
晴明様が落ち着いて話し合える部屋があるからそこで話すと良いと言う。
私に話ってなんだろう…


何事もなく冥界から現世へと戻る。
キョンシーのお兄さんが弟さんに怒られながら帰るのを見送った。
そして黒無常様と白無常様と静かな場所へ案内される。

「あの…お話ってなんですか?」
「貴女はどうしてここに来ましたか?」
「へ…?」
「ただの人間が晴明の下で修行なんてありえねぇからな。」
「……私は禰宜だったと言いましたよね。」

まだ夢で魘される、あの日の事をお二人に話す。

「なるほど…それはとても辛い事でしたね。」
「なぁ、やっぱりこいつで間違いないよな。」
「えぇ……巫女さま、よくお聞きください。」

白無常様から宮司様が私の事を大変心配しているということ。
村の安全が気になること。
信じがたい話に思わず、顔を凝視してしまう。

「私達は亡霊達の未練を消し、転生させることも仕事です。貴女の宮司殿は未練ばかり残っています。」
「あんたの宮司をどうか安心させてやってくれないか?その為なら俺達は何でも協力する。」
「……宮司様…」

私自身、あの鬼達が絶対に村を襲わないという確信はなかった。
どちらにせよ、いつかは退治しなければならない。
そのために弓術も磨き、毎日陰陽道を極めていた。

「宮司にあんた…巫女さんのことを見守ってくれとも言われてる。一人で勝手に行動するのは無しだからな。」
「では、一つ相談させてください…私は襲ってきた鬼達を退治しようと考えています。」
「……加勢しろって話か。いいぜ…いいや、させろ。」
「…!」
「これも宮司の未練の一つだからな。お前がそれで死なれちゃ困るんだ。」
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