晴明殿へと戻る牛車の中はとても静かだった。

「巫女さま、これで宮司殿にいい知らせを届けることができますよ。」
「本当ですか…!これで安心してくださるでしょうか…」
「えぇ、きっと。また報告しに参りますからね。」
「は、はい…!」
「……」

黒無常様はずっと腕を組んで、目を閉じたまま。
この後、もしかしたら罰を受けるのかもしれない。
どうしよう、私のせいだ。
私がもっと注意深く近づいていたら…

「あ、あの…黒無常様……ごめんなさい…」
「………お前が気にする事はない。」
「だけど…」
「動いたのは俺だ。俺が咄嗟だったとは言え、動いたのが悪い。だから気にするな。」
「………」
「少し危ない状況ではありました。私も弁明します。だから巫女さまは何も心配いりません。」
「…あの、お怪我はありませんか?」
「……すぐ治る。」
「…!あるのですね、見せてもらえませんか?」

訝しげな顔をしながらも腕に負った傷を差し出す。
その傷にそっと手を添えて、力を込める。

「今はこれ位しかできませんが…」
「…凄いな、跡もなく治せるのか。」
「また落ち着いたらお二人で私に会いに来てください。お礼がしたいです。」
「こちらは仕事ですから、礼は…」
「私がしたいんです!……ご迷惑でしたか…?」
「いいえ、ならばお言葉に甘えて、受け取らせていただきます。」

最初は大きな人で少し怖かったけれど、お二人共とても優しい方で良かった。
白無常様は特に落ち着いて話しやすい。


「戻ったか、無事そうで何よりだ。」
「あぁ、もうこいつが恐れることは何もない。」
「これから宮司殿に会い、転生の道へと導いてまいります。」
「二人ともありがとう、また困った時は相談しに来るといい。」
「私達の方こそ、またお困りの時はお呼びください。」


数日後に報告に来たのは白無常様だけだった。
黒無常様の事を聞くと、暫くは給料の減給と休みなしの処置を下されたとのこと。
酷い罰じゃなくて良かった…

「今度来る時には黒無常も連れると思いますから。」
「はい、お待ちしてます!……!」

手を掬われたと思うと口付けを落とされた。

「ではまた。」
「は、はい………」

少し恥ずかしい。
けれど、嬉しかった。

そして次に会った時、言い寄られることになるなんて、考えもついていなかった。
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