非特別
この春から親戚の関係で平安学園に高校生として入学することになった。
この学校は半妖と呼ばれる人達が集まる学校で、小中高まで一貫になっている。
それまで外の噂でしか聞かない半妖の存在。
特別な力を持っているとか、気が短いだとか、何するか分からないだとか…
まぁ良い噂は流れていなかったわけで…
だからとても不安だった。


「おまえ、外から来た人間なんだってなー!」
「うわーーー!だっせ〜〜〜!なんでここに来たのぉ?」
「…………」
「人間ってさー!弱いよなー!今いる奴らはほぼ人間だけど、ほんの少し妖怪だからさー?」

いわゆるいじめっ子に捕まってしまった。
彼らの言う言葉は何も入ってこない。
この学校は小中高一貫ともあり、教師たちがいる本館を中心に生徒寮と学年別館が3つある。
特に高校は半分放置された学年。
棟裏に行けば一日中いても誰にも見つからないだろう、と言える位には人目がない。
そんな所に連れて行かれた私はどうすることもできない。
逃げようとしたら何をされるか分からない。
そんな絶望感に打ちのめされながらも、早く終わらないかと思っていた。

「……ここで何をしているの。」
「は?…うわっ!刀女だ!みんな逃げろー?斬られちまうぞ!あぁぁあっ!なんてなー!」
「邪魔すんなよな!ちくしょうめ!今度は逃がさねぇから!」
「………はぁ…」

いじめっ子達が捨て台詞を吐きながら、走り去っていく。

「あなた…転校生……だよね。」
「………」コクリ
「名前はえっと………みこだっけ?」
「…」コクリ
「私は同じクラスの妖刀姫。あいつらの事なんか気にしなくていいよ。」

同じクラスと聞いて視線を上げて顔を見る。
長く黒い髪を束ねて黄金色の目が綺麗な女の子。
あと、思わず胸に目がいってしまった。

「怪我はない?」
「……うん…」
「ここ、人が来ないから私のお気に入りの場所なんだけど…ああいう奴らのスポットでもあるからさ。まぁ何もされてなくてよかった。」

優しく微笑む妖刀姫はどこからどう見ても普通の女の子だ。
あいつらが言っていた「刀女」とはどういう意味なのだろうか。

「あ…あの………」
「ん?」
「さっきの刀女って……」
「……………」
「…」
(聞いちゃいけなかったかな…)
「私はね、妖刀に取り憑かれているの。だから危ない時は体が勝手に刀を持って、相手を切り倒してしまう…」
「……」
「それでね、昔本当にクラスメイトを斬っちゃってさ。あの時見てた人は変わらず接してくれるけど、あいつらの噂で除け者にされたり…」
「ご……ごめんなさい…そんな…」
「いいのよ、素性の知れない妖は信用できないでしょ?ねぇ、次の授業一緒にサボらない?」
「………」

今から教室に戻ってもまた嫌な目で見られるかも…
次は無常先生でも目連先生の授業でもない。
その提案に乗ってみた。
1/3
prev  next